中国西部の内蒙古自治区は蒙古族放牧民たちの故郷です。昔から放牧民たちは河に沿って、草のおい茂る場所を探して遊牧する生活を送っていました。しかし、20世紀に入ってから、草原の砂漠化が深刻となり、広範囲の草原が減少しました。草原を保護するため、植樹造林が地元の放牧民に重視されるようになってきました。この数年、放牧民の努力によって、草原の生態環境は改善されつつあり、人々の生活レベルも向上しています。牧畜民のヤンボディゲさんとウインゴーワさん夫婦は荒涼たる砂漠で緑に囲まれて定住できる家屋を建てました。
「風は草原を掠め、いくつかの伝説が吹き散らした。あなたの伝説だけが残り、酒やミルクティーに溶け込み、歌になった、、、、」これは草原に伝わる蒙古族の歌です。この歌に草原に対する人々のあたたかい思いが込められています。しかし、気候変動や過度の放牧のため、草原が退化し、「風吹草低見牛羊」という詩がうたっているように「風が吹いて草が低くなびくと、平原のあちこちには放牧された牛や羊の姿があらわれる」という風景が草原から消えました。
昔、ヤンボディゲさんとウインゴーワさん夫婦の家があるオルドス市地区は毛烏素(ムウス)砂地の中間地帯にあり、年間の降水量は少なく、空は年中、砂塵に覆われていました。一家5人は土で作った低い家屋に住み、放牧で生計を立てました。1年間の所得はわずか1000元で日本円にして約1万3000円でした。当時のことを振り返って、ヤンボディゲさんは「当時、ここでの生活は苦しかった。砂漠は家屋の前まで迫ってきました。いたるところ、砂に覆われていた」と話しました。
この村で1万人余りが暮らしていますが、うち、8割は蒙古族で、ほとんどが牧畜業に取り組んでいます。毎年も砂嵐に見舞われ、生活が保障できなくなり、生存の頼りだった草原も退化していきました。
ヤンボディゲさんの家は合わせて460ヘクタールの牧場を所有していますが、10年前に、その3分の2が黄色い砂に覆われました。牧場に200頭の羊しか放牧できませんでした。こうした状況を変えようとして、まず、土地の改良から始め、27種類の10万本もの木や草を植えました。牧場はやがて緑に変わりました。しかし、この過程は、非常に苦しく、2人は汗を流して働きました。1983年から2人は毎年、牧場に100本ずつ樹木を植栽しましたが、生育率は1%しかありませんでした。植えたばかりの苗木が風で吹き倒されたのを見て、やる気がそがれたこともありました。しかし、落ち込まず、「頑張ればいつかは必ず成功する」と夫婦2人で互いに励ましあいました。一所懸命頑努力を重ねた結果、植木葉しだいに大きくなり、土壌も改良されました。
牧場をさらに保護するため、ヤンボディゲさんは自宅の牧場を夏季と冬季用の2つに分けました。こうして、草が一層茂るようになりました。
2000年から中央政府は西部地域のインフラ施設と生態建設への投入を拡大しました。政府の政策支援の下、ヤンボディゲさん一家は30年間暮らしていた古い家の近くにレンガづくりの新しい住宅を建てました。以前は炊事と暖房には家畜の糞を使っていましたが、現在はメタンガスと電気を使うようになり、家の前にはアスファルトの道路も敷設され、自家用車も購入しました。年間の所得は20万元余り(日本円にして330万円以上)に上りました。
この地域の放牧民は積極的に植樹造林を行っているため、この地域の緑の占める面積は80%以上になり、牧畜業の生産に良好な環境をつくりあげました。
今、50歳になったヤンボディゲさん夫婦はまだ大きな目標があり、「息子は大学を卒業して、仕事につき、孫も幼児園に入りました。これからもまだ数年に渡って植樹造林をし、故郷を見渡す限りのオアシスにして行く」と意気込みを語っています。(翻訳:トウエンカ)
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