中国西北部にある寧夏ホイ族自治区は周囲がテングリやウランブホ、モウスという3大砂漠に囲まれており、以前は黄色い砂塵が空を覆い、多くのところが不毛の地だったのです。その後、中国政府の西部大開発政策が実施されて以来、地元の各民族の人々は植樹造林を行い、多くの奇跡を作り上げました。
中でも王有徳さんは砂漠改造では常人では出来ないことを成し遂げた人だと言われています。
王有徳さんは1954年に、寧夏ホイ族自治区にある霊武市郊外の少数民族ホイ族の家に生まれました。その記憶によると故里の霊武は当時水が清く、草が生い茂るところだったそうです。しかし、20世紀の半ばから、乱伐と過度な放牧のため、ここの草原は砂漠化し、住むことにも不便になったのです。ですからその10数年間は、少年だった王さん一家と3万人余りの同郷はやむをなくあちこちへ移り住んだのです。
1985年に王さんは故里の霊武に戻りました。しばらくして王さんは寧夏白芨(きゅう)灘にある防砂林の造林場の責任者を務めました。この国営造林場はモウス砂漠の西南部にあり、敷地面積は約10万ヘクタールで、地元では風と砂ぼこりを食い止めるという役割を果たしていました。王さんの話では、1953年にこの造林場がここにでき、その後は黄河や広大な耕地と家屋を風や砂から守り、また3本の鉄道と10本の道路を保護し、空港の安全をも一応は維持してきたのです。
寧夏を流れる黄河に運ばれる土砂の量からいうと、長さ100キロにわたる霊武区間だけでも年間1億トン以上に達しています。ですから、もし、この造林場がなければ、風や黄沙、それと土砂による被害はもっと深刻になっていたでしょう。
しかし、その後、自然環境の悪化がすすみ、この造林場内と周りの土地の砂漠化がひどくなった上に、当時実施されていた計画経済という粗放的な管理理念によって、造林場の生産は進まず、職員は1年のうち半年以上仕事がなく、所得は数百元だけで、これでは家計が立たないと、3分の2の人が転職を願っていたのです。
これについて王さんは、「転職の理由は、子供の就学や医療が確保できないだけではなく、衣食住も問題となっていることだ。飲用水には問題があり、それぞれの住宅も古く、雨が漏れるなどが原因だった」と話しました。
王さんはこのような状況を改めるには砂漠改造をしっかり行い、何とかこれによって経済効果を得て、人々を貧困から抜け出させ、その生産意欲をよりよく引き出さなければならないと考え、このため3つの改革を実施することを提案したのです。
草方格
この改革措置とは、まずは行政管理に携わる人の数を減らし、より多くの人を砂漠改造作業に当てたことです。これは一般職員から歓迎されました。2つ目は、賃金の等級制度をなくし、同一の労働には同一の給料を与え、労働に応じて報酬を受け、働きが多ければ、それだけ報酬が多いというシステムを確立しました。そして3つ目は、職員が自由に職を求め、また、起業することを許可しました。もちろん、職員にこれら改革措置を納得させることは容易なことではありません。しかし、王さんは利害関係を細かく説明し、何とか職員たちを動員したのです。
こうして、王さんは職員を率いて、流動する砂丘に草と樹木を植え始めたのです。昼間は、職員たちと一緒に、なんと50度はある暑さに耐え、砂丘を平らして穴を掘り、樹木を植え、夜になると、砂漠の中に張られたテントの中で蝋燭の明かりを頼りに、砂漠改造のよりよい方法を考えて続けたのです。こうした努力によって、砂漠改造作業を始めたその年の暮れには、植樹造林面積が340ヘクタールに達し、それによる純収入は9万元以上となったのです。
ところで砂丘を固定するには草方格(そうほうかく、英:Straw grids または Sand fences)という流動性を持つ砂漠の緑化法を用いますが、砂漠の表面に埋め立てたワラ製の低い柵により、砂粒の飛散による地面の移動(風蝕)を防止して、牧草や植樹など植物が定着できる安定した土地を作り出します。これは大変な作業ですが、数十年の努力を通じて、砂漠は見事に緑に変わりました。
王さんは作業を始めるにあたって、職員一人が年に1万本の木を植え、1万ものの草方格をつくるよう要求しました。こうした結果、一人当たりの砂漠改造面積は6.6ヘクタールに達し、これによる所得もなんと1万元に増えたのです。
そして、砂漠改造に伴う工芸作物の栽培によって、職員の収入はより多くなりました。造林場では果樹園や苗木と花卉の栽培センターをも作ったので、ほとんどの職員たちは貯まったお金を使って素敵な住宅に移れるようになりました。もちろん、牧草も植えたことから牧畜業も進んできました。
このように以前は黄色の砂塵が舞い、生態条件が極めて悪く、経済的にも困難だった造林場は、今では、植生が豊かで、生態環境が優れた国定の自然保護区となりました。そして、外国による林業科学研究援助プロジェクトもここで行われています。また造林場の固定資産は1985年の約40万元から現在の1億元近くに増えました。
中国政府は、西部大開発戦略を実施して以来、東北、華北、西北の三つの地域では防風林作りに大量の資金を投入し、生態整備で大きな成果を上げました。
また、王さんは、これまでの努力と成果が認められ、今年の「全国の優れた人物」に選ばれ、北京で温家宝首相と握手を交わしています。
こうして王さんの指導の下に、白芨灘国営造林場の造林面積はいまでは年間平均1300ヘクタールの割合で増え続け、モウス砂漠の西南部には長さ45キロ、幅10キロもある防風林が出来ており、これは砂漠化改造では世界史上の奇跡だといえましょう。(翻訳:トウエンカ)
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