今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、先週に引き続き、清代の怪異小説集「聊斎志異」から四つのお話をご紹介いたしましょう。
最初は「誰もいいなくなったとき」です。
「誰もいなくなったとき」
李月生は三人兄弟の次男で、父は金持ちであり、銭や金塊は家の八つの甕(かめ)にしまってあるので、これを知った隣近所は、父のことを"李八甕(おう)"と呼んでいた。ここの(おう)とは甕の音読みである。
人は必ず衰えるもので、李八甕もその年に寝込んでしまい、自分はもう長くないことを悟った。そこで息子たちを枕元に呼び、甕の中の金を分けるという。しかし、その八割は長男がもらい、残る二割は三男にということだった。つまり、次男の月生は一銭ももらえないのだ。これに月生は怒ったが、父は長男と三男がいないときに月生に言った。
「月生や、わしのことを憎んでおるだろう」
これに月生がそっぽを向いているといい始めた。それは父はどうしたことか息子の中で月生が一番好きであり、この一番好きな息子には、長男と三男に黙ってそれ相応の金が残してあるという。
「月生や、人というものは必ず苦労するもの。それにお前の妻はよくできた女子じゃ。だから、妻がいればいまはお前は生きていけるわい。じゃから今のお前に金を渡せばお前は間違いを起こしかねる。いいか、金は誰もいなくなったときにお前にやろう」
「え?誰もいなくなったときに?」
「そうじゃ。うそはいわん。今のお前にはわからんだろうがな。覚えておけよ。誰もいなくなったときじゃ。それにこのことは妻には黙っておれ。いいか。お前はこれからの二十年、苦労するのじゃ。今お前に金を渡せば、きっとすぐに使ってしまうだろう。そのときになれは、お前はきっと困るだろう。そのときが来るまで待っておれ」
こういうと父は黙って目をつぶってしまった。月生は不審に思ったが、どうもわからない。見ると父は寝てしまったらしい。そこで仕方なく自分の住まいに戻った。
数日後に、なんと父は息を引き取った。そのとき、父から八割の財産をもらった兄は、葬式の一切の費用をだしてくれたので、月生と弟はかなり助かった。
さて、この月生は酒好きであり、人を家に呼んで飲むのが楽しみ。そして毎日のように妻にうまい肴を作らせて飲んでばかりいるので、町の悪友どもは、これはいいと月生の酒ばかりを飲みに来た。それに月生は家業や野良仕事もいい加減にしていたものだから数年後には、家計がおかしくなり始め、そのうちに三度の飯も粗末なものになる有様。幸い、妻が何とか工夫し、その上兄が助けてくれるのでどうにかなった。が、どうしたことか、優しい兄は数年後に持病がひどくなり亡くなってしまった。
こうなれば、月生の家の暮らしは苦しくなり、落ちぶれるのは速かった。それに弟も金がなくなり、月生を助けてはくれないので、よく出来た妻もついに病に倒れ、そのうちに一人息子も風邪をこじらし、なんと翌年に二人ともあの世へ行ってしまった。こうなっては月生はやっていけなくなり、数ヵ月後に友達から金を借り、人の助けもあって徐氏という女子を何とか嫁にもらった。ところがこの徐氏は普通ではなく、なんでもすぐに怒り出し、毎日のように怒鳴る。これを知った隣近所や友達の彼との付き合いも少なくなり、家には人もほとんど来なくなった。これに月生は手に負えない妻を怖がるようになってしまった。月生はその後、憂鬱な日々を送っていたが、どうしたことか、妻の徐氏がこんな男と暮らすのはもういやだと荷物をまとめ実家に帰り、夫婦の縁を切ると言ってきた。
これに困り果てた月生は、いやな女だと思って入るものの、妻にも見放されてしまったものだから途方にくれた。月生はその夜涙を流した後寝てしまい夢を見た。夢には亡くなった父が出て来ていう。
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