こうして夜になっても去病はまだ飲んでいた。あまり暗いので耿去病が明かりをつけると、庭から何か音がする。そこで去病は護身用の刀を手に外を覗くと応接間の近くの部屋の中の明かりがついた。
「誰だ?そこにいるのは!」と去病は叫んだが、門番の爺さんは怖がって出てくるはずがない。そこでその大きな部屋に入った。すると、部屋の真ん中には大きな卓が置かれ、学問がありそうな身なりをした四十ぐらいの男とその妻らしい女、それに二十歳前後の若者と十五六の娘が食事していた。そこへ去病が入ってきたので、一家らしいものたちは驚き、四十ぐらいの男のほかは立ち上がり隠れようとする。が、酒を飲んでいた父親らしいこの男が不意に笑い出して「勝手に入ってくる客人もいるんだな。お前は誰だ!」と聞く。
これに去病はいくらかむっとなり言い返す。
「何をほざくか!ここは私の屋敷だ。屋敷の主はこちらのほうだ!こんなところで勝手に飯を食ったりして。ふふ!屋敷の主が来たというのに酒ぐらい飲ませろ!」
これに父親はきょとんとし、すぐに「あんたは誰です?」と聞く。
「私は、この耿家の長男で去病というもの。昔から怖いものなしで知られている」
「これはこれは、失礼した。お名前は聞いております。さ、どうぞおかけ下され」
そこで去病は刀をしまい、「そうか。では遠慮はしない。そうそう、あんたたちも坐ったらどうだ」という。そして若者が酒と杯をもってきて席につき、妻と娘らしきものは部屋の奥へ隠れてしまった。こうして三人が飲み始めたところ男がいう。
「私は胡というもので、これが息子の孝児でござる」
「ほうほう。おいくつかな」と去病がきくと孝児は十九だという。
「おう、私より二つ若いな」ということになり、孝児は去病のことを兄さんと呼んだ。これに去病は喜び、酒が進んだ。父親もこの若い去病が気に入ったらしく、うれしそうに話しながら飲み、ふと思いついたのかこんなことを聞く。
「ところで、去病どの、あんたのおじいさんは"途山外伝"を書いたそうだが、ご存知かな?」
「ああ。知ってますよ」
「実は私は途山一族の子孫でね、唐の時代の家計図はあるのですが、五代以前のことはわからない。去病どのは知っておられるか?」
学問も好きだった去病はちょうどそのことを知っていたので、当時、途山一族が禹を助けて大水などを防いだことを話した。それに少し大げさに話したので父親はかなり興奮して聞いていた。
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