【観察眼】メーデー連休で新たな流れ 目的地より体験感を選択

2024-05-08 14:33:22  CRI

 5月1日~5日の今年のメーデー連休における中国での人気上位の旅行先は北京、上海、杭州、成都、重慶、広州、南京、武漢、西安、深センの順だった。これらの都市は経済が発達し、交通が便利で、文化や観光の資源が豊富で、いずれも中国国内旅行の人気目的地の「常連」だ。しかし中国では同時に、小さな街や農村部の観光の人気が急上昇する現象が進行している。観光関連発注の前年同期比の伸び率では、大都市は中小都市に及ばず、中小都市はさらに小さな県エリアを目的地とする県域旅行に及ばなかった。この現象は旅行市場の多元化の流れを反映しているだけでなく、旅行体験に対する消費者の新たな求めを示している。

 中国文化観光部の推計によると、メーデー連休期間中の中国全国の国内旅行者は前年同期比7.6%増の延べ2億9500万人に達した。中でも「玄人好み」の土地での観光客数の伸びは著しかった。中国国家鉄路が運営するチケット購入サイトの「中国鉄路12306」によると、河南省洛陽市、広東省潮州市、雲南省大理市、安徽省阜陽市、河北省邯鄲市などが旅客の純流入量の多い目的地だった。中でも洛陽は清明節連休の人気を引き継ぎ、メーデー連休中には再び流入旅客量が最も多い都市になった。世界最大級のオンライン旅行サイトであるシートリップ(携程)によれば、メーデー連休中の中国の小都市を目的とする旅行予約注文は前年同期比140%増で、増加幅は大都市を大幅に上回った。県域ではホテル予約注文が同68%増で、観光地のチケット注文は同151%増だった。従来型とは異なる旅行先への関心が高まっていることが分かる。

 北京在住の陳さんは、メーデー前に友人と旅行を計画して浙江省杭州市桐廬県を目的地に選んだと話した。その理由は、景色がよくて北京からは高速鉄道で行けて、往復の旅費が1000元(約2万2000円)未満だったからという。陳さんは、大都会の混雑した人気観光地ではなく、小さな街でより費用対効果の高い休暇をのんびり過ごしたいとの考えだった。

 今年のメーデー連休には、杭州市・桐廬県の花見ツアーや農村レジャーなどが人気を集めた。観光客は青々とした山々や水の豊かな生態を楽しむことだけでなく、地元の文化を堪能できる。成熟した商業化の運営モデルも観光客をさらに引きつけている。

 中国版エアビーアンドビー(Airbnb)と言われる中国の民泊予約手配サイト大手の途家(トゥージア)の劉楊最高ビジネス責任者(CBO)は、「県域旅行がますますブームになっていることは、現地のインフラ整備が進んでいることに関係しています。客のリゾートやレジャーに対する求めを満たすことができるようになり、また、現地の文化と結びつけたユニークな民宿体験イベントを提供できるようになりました」と分析した。この連休までに「途家」のユーザーに対する民泊予約の対象地は中国全国の1227県をカバーするようになった。将来にはさらに多くカバーする計画だ。県域旅行の人気は他の旅行関連プラットフォームにも反映されている。シートリップは、今年になってから新たに1000カ所近くの県域観光地を追加した。また、大まかな統計によると、2023年12月以降には10の省級行政区内に4A級景勝地が計127カ所追加され、うち65%が県級だった。

 「県域旅行」ブームは中国国内の旅行市場が成熟しつつあることを示している。観光概念の多元化に伴い、「単一で同一」という観光市場の状況が変化して、多層・多業態・多様の特徴を持つ市場構造が形成されつつある。独特の文化の魅力と歴史の奥深さを持つ「玄人好み」の観光地、本場のご当地グルメを味わえる小さな店など、人々が新たに求めるものは目的地そのものではなく、「没入型の体験」に変わりつつある。今後は、シルクロードの歴史的な都市である甘粛省天水市や福建省で一番大きな島である平潭島などの小さくて美しい観光地も「天下と広く縁を結び、八方の客を迎える」ようになるだろう。(CMG日本語部論説員)

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