EU(欧州連合)の代表として、イギリス、フランス、ドイツの3カ国は21日夜、提出したイラン核開発問題についての決議草案を修正し、今回の国際原子力機関(IAEA)理事会がイラン核開発問題を国連安保理に付託することを見送りました。これによって、膠着していたイラン核開発問題は、対話をすすめていける転機をむかえています。
20日、EUは、国際原子力機関理事会会議でイラン核問題の国連安保理付託を要求するなどの内容を含む決議草案を広く配布し、21日の理事会会議で、アメリカや日本、オーストラリア、カナダなどの国から支持を得ました。しかし、一方で、ロシアや中国、また多くの非同盟国はその決議草案に反対しました。
ロシア代表は、「イラン核問題の国連安保理付託は、外交ルートによる問題の解決に不利益だ。現在、国際原子力機関が調査すべき疑問点は存在しているものの、イラン側の自発的で率直な協力が得られれば、あらゆる問題は解決できるはずだ」とした上で、関係国と共に努力し、バランスの取れた決議草案を起草し、イランによる原子力の平和利用が保証される前提で、イラン核問題の解決を促進していきたいとの立場を示しました。
中国駐国連ウィーン事務所の呉海龍大使は、22日、国際原子力機構理事会会議で、イラン核問題は、重要な時期にあると指摘した上で、「関係各側は、将来に目を向け、それぞれの長期的な根本利益を考えるべきだ。国際原子力機構は、あくまで外交手段により、イラン核問題を解決することこそ、地域の平和や安定、国際核拡散の防止メカニズムの維持に有利であり、各側の根本的な利益にも符合していると考えている。当面の急務は、EUとイランが双方の利益を考え、一日も早く対話を再開することだ。また、国際原子力機構理事会の非同盟国14カ国は、国連安保理付託に反対している」と述べました。
こういう状況の中で、新たな決議案では、国連安保理付託に関する部分が削除されました。一方、イランが核拡散防止条約の義務に違反していることも明記されています。しかし、EUの外交関係者は、国際原子力機構は、常にイラン核問題を国連安保理に付託することができると主張し、また、フランス、ドイツ、イギリス3カ国の外相らは、22日、フランスの新聞に連名で文章を発表し、「団結して、イランの挑戦に受けて立とう」と呼び掛けました。
イランは、EUによる決議案の修正に歓迎の意を表し、衝突がエスカレートすることは、お互いに得策ではないと指摘しています。イラン駐国際原子力機構代表は、イランが核問題について一貫して立場を変えず、理事会内部からも反対の声が上がり、そして、国連安保理付託は法律面での根拠に乏しいことなどが、EUが決議案を修正した理由だと分析しています。
関係筋によりますと、ロシアは、いまだに新決議案に不満をもっており、関係各側は、新決議案への修正作業を継続する可能性があるとのことです。しかし、アメリカとEUが、理事会の過半数を閉めていることから、もし新決議案が採択されない場合、元の草案の表決を要求するという強硬な態度を示しています。
|