「おかしな夢」
時は唐の開元年間。劉さんという貧しい読書人が河北にいる親戚を頼って行ったが、相手にされないので、黎陽に足を運んだところ、そこに住む友人からも断られた。これにかなり落胆した劉さんは当てもなくふらふら歩き、夕暮れ時に町外れにある大きな屋敷の前に来た。
「こうしていてはまたも野宿せなきゃならん。それはいかん」と劉さんがその屋敷の門を叩いたところ、門番らしいじいさんが出てきた。それはおかしな顔をしたじいさんで、劉さんはドキッとしたが勇気を出していう。
「今夜は遅くなり、これ以上行くと郊外に出るので屋敷のどこでもいいから泊めて欲しい」
するとじいさんは「旦那さまに聞いてくるからまっていな」といって中に入っていき、すぐに出てきて入りなという。これはよかったと劉さんが庭に入ったところ、応接間らしい部屋から屋敷の主らしい男が出てきてじいさんに何かを言い、また部屋に入っていった。
そこでじいさんが劉さんい言う。「旦那さまがあんたに応接間に来いだとよ」
「え?」
「ああ、早くいきなされ。向こうに酒と食べ物があるから」
そこで劉さんが応接間にやってくるとかの男は劉さんに座るよう勧めた。、「私の父らが当時この土地に移ってきましてね。ですから幼いときからここの住んでいるのですよ」
主がこういうので、劉さんも礼儀として自分のことを少し話したところ、主は下女を呼び、酒肴を持てという。やがて酒と肴が運ばれたが、両方とも味がおかしかった。
そのうちに「今日はお疲れでしょう。はやくお休みなさい」というのでそうすることにした。そして下女が来て「お客さまはこちらでお休みなさいませ」という。そこで劉さんはその部屋にはいり、下女に屋敷の主はいったいどのようなお方だと聞くと、下女は近くの河の主(ぬし)だという?
「河の主?」
「それ以上聞かないでください。さもないと叱られますから」
「え?叱られる?」
これに下女は黙って行ってしまった。劉さんは仕方なく横になることにした。旅路でかなり疲れていたのか、すぐに寝てしまった。
と、夜半になって劉さんはある悲鳴に目を覚ました。声は小さかったが旅を続ける劉さんのこと、気はいつも張っている。そこで劉さんが起きてそっと庭に出てみたところ、悲鳴は遠くの部屋から聞こえるので、劉さんは少し考えたあと、その部屋の外に行って窓の隙間から中をのぞいた。すると中ではある男が裸にされ数人の屋敷の者に目を痛めつけられ血を流して唸っていた。
これに劉さんが思わず声を出したので、屋敷の主は「お客人、こやつはこの県の県令でな。狩りを好み、何度も私の屋敷に邪魔しにきたので、懲らしめているところじゃ」という。これに劉さんはびっくり。
と、そのとき劉さんは目が覚めた。なんと夜が明けており、またそこは墓場の前だったので驚いて起き上がり、あたふたと歩き出した。しばらくして黎陽県の役所がある町に着いた。金もないのでどうしようかとうろうろしているとある役人が来て県令がお呼びだという。
「え?県令がわたしに?」
これに役人はうなずいたので劉さんはおとなしく付いていった。役所では県令は目を悪くしていて、昨夜の夢で劉という人が来れば自分の目は治るとあるじいさんがいったという。これに劉さんはまたびっくり。そこで昨夜の夢を話し、自分は墓場に寝ていたのだという。県令これを聞いて早速人をやり、その墓場を焼いたところ、これまで痛かった目はよくなった。喜んだ県令は礼として銀二十両を劉さんに渡した。これは助かったと劉さんはこの二十両を持って故郷に帰ることにした。
と、翌日、劉さんが故郷に向かっていると、ある畑の近くで、ぼろぼろの服をまとった男が出てきた。びっくりした劉さんがよく見ると、それは夢で見た屋敷の主だった。
「お客人、故郷へ帰りなさるか」
「あんたは・・」
「私は・・・実は幽霊だが、あの焼かれた墓の番人でね。墓が焼かれたので、役目は終わりだ」
これに劉さんは困り、考えた挙句、黎陽で買った土産や服を渡し、「主、これで勘弁してくれませんか」という。これに男はにやっと笑い、「気にすることはない。私はこれから河に戻るから」と言い残し、ふと消えてしまったワイ。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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