「死んだはずの県令」
岐陽県の県令李覇は、権力を頼みに汚い金を受け取ったり、人から金を搾り取ったりはしない。が、他人に金や物を与えたこともなく、いつも他人を叱ってばかりいた。そこで役所の者や牢獄頭にいたるまで、どうしたことか李覇のことをよくは思わず、影で短気でけちだと悪口をいう。そかしみんなは怖がっていた。李覇はおかしなところはあるが、袖下は使わないので暮らしは豊かではなかった。
さて、県令になってから三年目の春、李覇は急な病に倒れ死んだ。李覇は棺おけに入れられたが、普段から嫌われているので、誰も悔やみには来ない。これに妻は歎き、生きていたときの李覇の人柄を恨んだりした。
と、翌日、妻が棺おけを置いた部屋で泣いていると棺おけの中から声がした。
「奥よ。わしのことで悲しむな。わしは明日戻ってくるから。いいか、明日、役所の者どもをここへ呼べ。忘れるな」
これに妻は驚きのあまり腰を抜かしそうになったが、夫の言いつけなのでそのとおりにすると答えた。
そして翌日、役人たちが部屋に来ると棺おけが開いて中から李覇が出てきたので、みんなはびっくり仰天。それに李覇が話し始めたのその場で震えだした。李覇はこれに怒った。
「その方ら、わしが死んだのに誰も悔やみの来ないとは人情なき者どもよ。わしの殺されたいのか!!」
李覇がこう怒鳴った途端、下役人たちはその場にバタバタ倒れ息をしなくなった。さあ大変だと屋敷の者がこのことその家族に伝えたので、家族たちは顔色変えて飛んでくると跪き、震えながら念仏を唱えた。すると李覇がいう。
「わしは術が出来るので、この者どもを生き返らせるのは容易なことじゃ。いいか、絹を沢山用意すれば生き返るぞ」
これにこれら家族たちは安心して、倒れていた役人を運んで帰って行った。李覇はその場に残った二人の役人たちを叱る。
「わしは普段、お前たちに悪いことをしていないのに、どうしてわしにそんなに冷たいのだ。お前たちの命は奪わぬ。その代わりお前たちの家の馬を殺してやるわい」
これに二人の役人は恐れおののき土下座した。
そして次の日、この二人の役人の屋敷の馬が急に倒れ死にそうになったので、この二人の役人は慌てて町から四頭の駿馬を買い求め、王覇の屋敷に送り届けたので、死にそうだった馬たちは元気を取り戻した。
さて数日後、李覇はまたしても役人たちを屋敷に呼んだ。
「わしはもうすぐ本当に死ぬ。これまで貪ることなどしなかったので貧乏でおる。どうじゃ?わしの死ぬ前に何かをくれんか」
これを聞いた下役人は翌日、それぞれ金目のものを李覇の屋敷に届けてきた。これに李覇はにやにや。そしてもうこのぐらいにしておくかというと黙ってしまった。、
さて李覇な翌々日の夜に棺おけに入り、妻と息子に「わしはあいつらの薄情さに頭にきたのじゃ。そでだけじゃ。これからも汚いことはするな。いいか!ではもう戻らぬからの」といい、目をつぶってから息を引き取ったわい。
その翌日、役人たちの家の庭には、これまで李覇の屋敷に届けた絹や金目のものがそれぞれ積んであったという。
最後は同じく「広異記」から「おかしな夢」です。
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