こうして正月も10日を過ぎたので、李五義は礼儀として多くのものを下男に持たせ王家を訪ねた。そこで王実心は大きな食卓に同じように多くの料理を並べた。やがて妻が汁物を食卓に置くときに汁をこぼしてしまったので李五義が見ると、自分の家のよりも大きい食卓は一本の足が短いのだ。このとき、王実心は四人の息子を呼び、食卓の四つの足をそれぞれ持ち上げろという。そこで四人の息子は食卓のの足をしっかりつかみ同時に持ち上げたが、食卓は微塵も揺れない。これを見て李五義は驚いた。そこで王実心がいう。
「五義さんよ。わしの四人の息子は、あんたの四枚の銀よりいいだろう?銀には命などないが、息子は生きた人間だよ」
これに五義はその意味がわかり、酒はまだ何杯か飲んだだけなのに、顔を真っ赤にした。
それからというもの、李五義は以前のように贅沢振りを見せ付けなくなり、話す言葉も遠慮がちになってきた。
こうして数年が過ぎたが、李五義は体を悪くし、それに息子もないので金稼ぎもうまくいかず、ついには蓄えだけに頼るようになった。そしてどうしたことが妻は急な病で死に、その後自分も重い病にかかり、それを治すためにかなりの金を使ってしまった。こうして李家はだんだんと落ちぶれた。
それに比べ、王家は四人の息子がそれぞれ頑張り、稼ぎは増えるばかり。こうして数年後には、火事の前より豊かになり、売っていた田畑を買い戻し、さらに立派な屋敷を建てた。そして後にはここらで一番の金持ちとなったわい。しかし、王実心はかつての李五義とは違って優しく、姻戚同士だというので嫁に来た李五義の娘に、その夫である自分の長男を連れて李家に住み着かせたので、李五義も元気を取り戻し、その後は安心して暮らしたという。
今度は「蓬莱米の伝説」です。で、蓬莱米とは台湾のお米のことです。このお米は丸くて真っ白で、光沢があり、小さな真珠のように見えます。ではまいりましょう。
「蓬莱米の伝説」
むかし、幼いときに両親をなくした阿小という若者が、これまで世話になった村人たちのために、幼いときからおいしいと聞いていた蓬莱米を食べさせたいため、その種を手に入れようと旅に出ようとした。ところが村人たちは、危ないからと止めた。しかし阿小は大丈夫だとみんなに言い聞かせ村を離れた。こうして十数日も歩き、台湾の北の海に出た。舟がないので困っていると岸辺の近くに小屋があり、そこから一人のばあさんが出てきた。
「若いの。そこで困った顔してるが、どうしたのじゃ?」
そこで阿小はわけをいうとばあさんがいう。
「若いの、わしは海の神の一人でな。わしはお前を鳥に変えるから、海を飛んで渡り、蓬莱の島にいきなさい。しかし、言っておくが狩人は必ずお前を射落とすじゃろう。で、怪我だけであれば人間に戻れる。が、死んでしまえばそれでおしまいじゃぞ」
「え?死んでしまえばそれでおしまい?」
「うん。どうじゃ?怖くなったかい?」
「いや、村人たちに蓬莱米を食べさせるためなら、おいらは死ぬことも怖くない。おばあさん、早速おいらを鳥に変えてくれ」
これにばあさんはにやっと笑い、阿小の肩を軽く叩いた。すると阿小は一羽の丹頂鶴に変わったので、ばあさんにお辞儀したあと空に舞い上がった。
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