今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日は昔の本「太平広記」からお話を三つご紹介しましょう。
最初は「草原での出来事」、そして「川に浮かぶ大木」、最後は「幽霊の仕返し」です。
では「草原での出来事」から
須(しゅ)県に十三歳になる姚午という少年がいて、何とその年に、父親が殺されてしまった。これに怒った姚午は、家のものを売って刀や槍を買い、武術の先生について一生懸命に習い、親の敵を打とうと必死になった。そして数年後にあるところで父の敵を見つけ、どうにかして大勢の人前で¥相手を殺した。もちろん、人殺しなので役人は姚午を捕まえ、県令がその取調べに当たった。そのとき、姚午は殺したものは父の敵であり、正直者の父は山で刈った柴を町で売り終わり家に戻る途中、かのものに殺されたので、姚午はその敵を討ったのだと聞いた。
ところが、残念なことに、姚午が殺した男が父親殺しの下手人だという十分な証拠はない。しかし、正直そうな姚午を見て、これは敵討ちに違いないと思い、何とかして姚午をお構いなしにしようと県令は努めた。おかげで姚午は半年くさい飯をくったのち、牢から出された。
さて、次の年、この県令が休みの日に狩に出かけ、一頭の鹿を見つけたので、それを追うと、鹿は深い草原の中に逃げ込んだ。そこで、逃がしてなるものかと県令は乗っている馬に鞭を当て草原に入り込んだが、急に一人の五十ぐらいの男が出てきて、馬の尻を叩く。驚いた馬は県令を乗せて草原を出たが、県令はこれが悔しくてならない。
「こら!そこのもの!何をいたす!わたしがせっかく鹿を追い詰めていたというのに!」
これにその男は「県令さま、この草むらには上からは見えませんが幾つもの深い井戸がございます。そのまま馬ではいられると危ないので、わたしめが、馬の尻を叩きました」
「な、なに?草原に大きな井戸が?、で、その方はなにものじゃ?」
「はい、わたしめは、あなたがお助けになった姚午の殺された父めいございます?」
「え?殺された父親!?」
「はい。敵を討った息子をお助けになり、ありがとうございました。ではこれで」
と、言い残し、男はふと姿を消した。驚いた県令が、馬を下りて恐る恐る草原に入ってみると、中には深い井戸が幾つもあったワイ。県令さんよ。あぶないところだったのう!
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