さて、朝飯のあと、この船主がかの三人の男から渡された銀二百両の入った箱を開けてみると、中にあるのは、銀によく似た平べったい石だったのでびっくり。さっそく任秀たちが乗る船に来て、わけを話し、自分の銀を返してくれという。これに任秀は怪訝な顔をしていう。
「なんだい?そんなこと知らないよ。銀を出したのはこちらじゃないからね」
「なにをいう!そんな無茶なこという若いあんたはどこの誰だい?」
「私か?私は山東の任秀というもの。親父は任建之といって、数年前に陝西に行く旅の途中で死んでしまったけどね」
「え?任建之?」
「ああ!おじさん、私の父のこと知ってるのかい?」
「え?その・・・・いや。知らないけど」
船主はここまで言うと黙ってしまい、下を向いてとぼとぼと自分の船に戻っていった。そう、もうおわかりかな?この船主、実は数年まえに陝西に旅する途中、人のいい任建之と道連れとなったものの、宿で死んだ任建之からの頼みごとを面倒だと思い、二百両をもらって持って逃げてしまった申竹亭だったのだ。
こちら任秀、この様子を見て船主を怪しんだが、自分の父は後の調べて病で死んだということがわかっていたので、船主のことは忘れ、叔父の張瑞と共に都に行った。
こうして任秀は博打で買った金を元に、叔父の張瑞と都に近い町で新しい商いを始め、次の年には大もうけした。そして知恵と金を生かし、後には大金持ちになり、母と家族を迎え、また嫁ももらい、幸せに暮らしたという。
今度は「かわいい白猫」です。
「かわいい猫」
時は、明の万暦年間、宮廷に大きな鼠がでた。それは猫の大きさもあり、かなり暴れまわるので、民百姓の家から強そうな猫を多く買い取って退治させようとしたが、なんとすべてこの大鼠にかみ殺されてしまった。
と、ある日、係りの大臣が、数ヶ月前に国外から毛が白くふさふさした猫を貢物として送られ、それがとてもかわいいので三番目の姫が飼っていることを思い出した。そこでほかの者と相談した上、早速、その猫を借りて試してみようということになった。姫はこの話を聞くと最初は嫌がったが、大鼠の被害がひどいのを知っているのでしぶしぶと貸した。
こうしてその日、大鼠がいつも暴れる大部屋にこの猫を放したところ、しばらくして大鼠が出てきた。この猫、大鼠を見て驚いた後黙ってそこにうずくまってしまったので、係りの大臣はこれもだめだと嘆いた。一方、大鼠はこのかわいい猫を見ていきり立ち襲い掛かってきた。すると猫はすばやく飛んで高い卓上に上がったので、大鼠もそれを追い卓上にあがった。すると今度は猫は卓上から下に飛び降りたので、大鼠は後を追って飛び降りる。このように猫と大鼠は追いつ追われつで数百回は上がったり降りたりしただろう。
これに大臣たちはため息をつき、この猫を姫から借りてきたことを後悔した。と、そのうちに大鼠は疲れが出たのか、動きが鈍くなり、息も荒くなってついには下で一休み。と、このとき、白猫は、大鼠の頭に飛び移り、これに気づいた大鼠がそれを振り払おうと首を横にした途端、猫は牙をむき出し、大鼠の首に噛み付いた。驚いた大鼠、それがとても痛かったのだろうか、チュー!チュー!と鳴いて逃げ回る。しかし、猫は必死に噛み付き、そのうちになんと大鼠の首を噛み千切ってしまっていた。
これに大臣らは驚き喜び、その後、このかわいい白猫は大事に大事に飼われたというわい!
そろそろ時間のようです、来週またお会いいたしましょう。
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