今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?
この時間は清の時代の怪異小説集「聊斎志異」から「任秀」、それに「かわいい白猫」というお話をお送りします。まずは「任秀」から
「任秀」
山東の魚台県に任建之という商人が住んでいた。任建之は絨毯や毛皮を売っていたが、ある年、仕入れのため陝西に向かい、途中で一人の男と出会った。この男は申竹亭といい、前を行く任建之が落とした荷物を後ろから来た申竹亭が拾い渡してくれたのだ。これに喜んだ任建之はお礼にとしばらくしてついた町の飯屋で昼飯を馳走した。そして話しているうちに申竹亭も陝西にいくことがわかり、二人は気が合うようで、その夜は、ある宿屋に泊まって義兄弟の杯を交わし、任建之が二つ上なので、申竹亭は彼を兄さんと呼んだ。
こうして一緒に旅を続けたが、陝西についた翌日、任建之は急な病に倒れた。申竹亭が医者を呼び、薬をもらって一生懸命看病したものの任建之の病は重くなった。そして十数日が過ぎたが、任建之は水ものどを通らなくなるまでひどくなった。自分の命がまもなく終わると悟った任建之は、顔を苦痛にゆがめながら申竹亭にいう。
「竹亭、私はまもなくあの世に行くだろう」
「兄さん、何を情けないこと言い出す!」
「いや、わかってんだ。自分のことは自分が一番わかるよ」
「・・・・」
「聞いてくれ」
「うん」
「わたしはまもなくあの世に行くだろう。竹亭はもう私の兄弟だから頼みごとがある。私の荷物の中に銀二百十両あまりがある。そのうち十両で私の棺おけを買ってくれ。残る二百両の半分はあんた元金にして何か商いを始め、後の半分は家に届けてほしい」
「なにをいう。私は金は要らない」
「いや、兄が渡す金をもらうのはおかしくない。もらってくれ」
これに申竹亭は黙っていると、任建之は「家族に私の遺骨を持ち帰らせるのだ。いいね、頼んだよ」といい終わり、激しく咳き込んでから気を失い、その日の夜に息を引き取った。
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