今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
早いものでもうすぐ7月ですね。数日前久しぶりに野菜市場へ行ってみますと、新じゃが山と積まれていました。実は新じゃがが出回ったのはここ数日ではないのです。何しろ私はジャガイモは好きなほうですから、一応買っておこうと2キロ足らず求めました。そして大好物のネギも買って帰りました。
さて、今日の肴は何にしようと冷蔵庫を開けると、家内が前日買っておいたセリを見つけましてね。これはいい、和え物にしようとジャガイモは皮を剥いて千切りにし、まずは水にさらしてから熱湯でサッと茹でました。
次にセリですが、きれいに洗ってから葉っぱをとり、4センチぐらいの棒切りにしてから縦にジャガイモと同じ太さに切ります。それをまた熱湯で軽く茹でます。今度は和え物の調味料作り。すりゴマ、酢、淡口の醤油、砂糖と塩、それにラー油をそれぞれ適量混ぜ合わせ、ボールに入れたジャガイモとセリにぶっ掛け、かき混ぜて出来上がり。もちろん、晩酌のおかずは、これだけでは寂しいので豚レバーの醤油煮とピーナツの塩茹でを加えました。もちろん、お酒は中国の「白酒」です。新じゃがは、おいしかったですよ。次は小さな新じゃがを選んで、甘辛の煮ころがしでも作ろうと思っています。
さて、今日のこの時間は、清の時代の短編怪奇小説集「聊斎志異」から「胡家の四旦那」というお話をご紹介しましょう。
「胡家の四旦那」
いつのことがはっきりわからん。山東の莱蕪というところに張虚一という若者がいた。ここでは張さんにしておこう。この張さんは、肝っ玉が太く小さなことにはこだわらない人物。それに物好きでもあった。
と、ある日、となりの町の、長いこと空き家になっていたある屋敷に何かが住み込んだらしいとのうわさを耳にした。張さんは、「これは面白い。いったいどなたが住み着きなさったのかな?」と名刺をもって、翌日、下男を連れてとなりの町にいった。そして町のはずれにあるその屋敷を捜し当て、名刺を玄関の門の隙間から差し込んだ。しかし、大きな門はすぐには開かなかったので、ついてきた下男がいう。
「若旦那。帰りましょうよ。きっと空き家ですよ。誰も住んでいませんよ。何かが住み着いたなんていうのは、きっと暇な人間が流したデマですよ」
「いや。ほんとかもしれんぞ。ま、もう少し待っておれ」
と、張さんは、今度は門を軽く叩いた。すると、不意に門が中なら開いたではないか。これを見た下男、びっくりして、なんと主人をおっぽり出してどこかへ逃げてしまった。
「なんだ、おまえ!!どこへいく!」と張さんは逃げていく下男を叱ったが、どうにもならない。そこで振り返って開いた門の方を見ると門を開けたものの姿がない。
「うん?あのー!えーっと。私は張虚一と申すものですが・・えーっと、門が開いたということは、中に入ってよろしいのですね。では、では、失礼!!」
こうして張さんは緊張して屋敷の中へ入っていった。
大きな庭には古木が多く、長い間空き家だったせいか、雑草が高く生え、荒れ果てていた。しかし、部屋に入るときちんと整理され、とても静かであった。そこで張さんは一礼して言った。
「私は、ご主人に会いたくてここに参りましたゆえ、ご主人は私の気持ちを察して中へ入れてくださったのだろうと思います。そこでお願いがござる。どうか姿を現してくだされ」
すると、誰もいない部屋で声が聞こえた。
「遠いところをわざわざご苦労様でした。実は屋敷には私と下男たちがいます。私は話し相手がいないので寂しく思っているところでした。そこへ貴公がこられたのでうれしく思っています。まずは、お座りくだされ」
この声が終わると誰もいないのに、中の部屋から二つの椅子が浮かぶように近くに来て地面に静かに置かれた。これには張さん、ギョッとしたが、それでも自分に「落ち着け落ち着け」と言い聞かせながら椅子に座った。すると今度は、二杯のお茶が赤いお盆に載せられ浮かんできて、近くにある卓におかれた。そこで張さんは遠慮なくお茶をすすった。そのお茶はとてもうまかったので、張さん思わず「うまいお茶ですな」といってしまった。
するともう一つの茶碗が宙に浮き、いくらか傾き、自分の向かい側でも誰かがお茶を飲んでいるようだった。しかし、見えない相手は黙ったまま。仕方がないので張さんも黙ってお茶を飲み続けた。しばらくしてお茶が飲み終わると、今度は見えない数人のものが入ってきたような気配がした。そして卓上には酒と肴が並べられた。うれしくなった張さんが思い切って見えない相手に言った。
「私は先ほど申したように張虚一というもの。となりの町に住んでおりますが、貴公は?」
「私は、苗字は胡といい、四男ですので下男たちから四旦那と呼ばれています。」
「四旦那ですね」
「いかにも」
「これはこれは、胡の四旦那どの。はじめまして」
という具合に、一方の姿は見えないものの、二人は酒を酌み交わし始めた。酒は上等の酒で、肴は変わったすっぽん料理や鹿の肉料理、それにいろいろと珍しい野菜料理もあり、どれも酒に合ってうまい。こうして二人はかなり飲み、張さんがこの辺でお茶をいっぱい飲みたいなと思った途端、おいしいお茶が運ばれてくる。そのあと張さんはまた酒を飲み始め、この日の夜はかなり飲んだ。
こうして張さん、千鳥足でどうにか家に帰っていった。もちろん、張さんが夜道を帰るときに、見えない何かが張さんを支え、無事にとなりの町にある屋敷まで送っていったのである。
こうして、このときから張さんは三日に一度は胡の四旦那を訪ねにいき、四旦那も時には張さんの屋敷にこっそりやってくる。もちろん、張さんは四旦那が家に来た時は、家のものには内緒にしてある。四旦那の姿は見えないが、四旦那はいろんなこと知っているし、酒もかなり強く、それに馬が合うというのか一緒に飲んでいると楽しくなるのでいつも大事な客としてもてなした。そして相手が姿を見せないのはそれだけの訳があるのだろうと悟っていたので、姿を見せてくれなどとはもう言わなかった。これには四旦那も安心してか、二人の仲はますます深くなっていく。
ある日、張さんは四旦那の屋敷できあることを思い出して四旦那に話し出した。
「四旦那、ご存知であろうが?南城に一人の怪しい巫女さんがいて、自分はキツネの神通力を借りてどんな病も治せるといい、これまで多くの人を騙し、かなりひどいことをやっとるが、貴公はどう思う?」
「ああ、あれか。あれはひどい。あれの家にはキツネなどはおらん」
「どうして知っておられるのかな?」
と張さんが聞いたとき、目には見えない誰かが側にきて張さんにささやく。
「張先生。いまおっしゃっていた怪しい巫女ですが、何者かはわからないので、わたしめが先生について様子をみにいきたいのですが?」
「うん?」
「ですから、このことをわたしめの主におっしゃってくだされまし」
これを聞いた張さん、これが四旦那の下男だと知り、さっそく四旦那にいう。
「どうでござる?貴公の下男が私と一緒に様子を見に行きたいともうしておるが・・」
「その必要はないでしょう」
「いや、やはり下男を連れ、これから様子を見に行きましょう」
張さんがこういうので四旦那も仕方なく同意した。そこで張さんが庭に出ると、なんと庭には馬が早くも用意されていた。そこで張さんは馬に乗り屋敷を出た。すると耳の側でかの下男の声がする。
「張先生、何かが落ちてきたら、それがわたしめがやったことだとお思いくだされ」
「お!わかった。」
こうして張さんは、南城のかの怪しい巫女の家にやってきた。
こちら怪しい巫女、蹄の音がしたので門外へ出てみると、どこかの若旦那風の男が馬から下りているところ。これは客だなと思いさっそく出迎えた。
「これはこれは、どうかしましたか?」
「いやいや。私はお宅のキツネの御利益を怪しんでいるものでしてね。」
これには巫女が怒った。
「なにを申されます!あなたのような身分の方が!それにキツネとはなんです?呼び捨てにすると罰が当たりますよ!」
巫女がこういった途端、どうしたことか空から一欠片のレンガが飛んできて巫女の手に当たった!
あまりの痛さに跪いた巫女は、張さん睨んで怒鳴った。
「どうして私を襲うのです!」
「なにをいう。私はなにもしておらんぞ!自分で勝ってによろめいておいて人のせいにしてはいかんですぞ」
これを聞いた巫女、ではいったい誰がどこから投げたのかと周りを見ていると、石ころが飛んできて巫女の頭に当たったので、倒れてしまった。そして次は多くの泥が飛んできて巫女の顔にあたり、ひどい顔になった。びっくりした巫女は悲鳴を上げて自分が人を騙していたことを詫び始めたので、泥は飛んでこなくなったが、これを見て巫女は家に駆け込み、戸を占めてしまった。
そこで張さんが笑っていう。
「どうだい?わたしの神通力は!あんたのよりすごいだろう?」
巫女はこれを聞き部屋の中でまた謝りだした。そして張さんが空中に向かってもういいだろうと言ったのを聞いた巫女はやっと家から恐る恐る出て来て、張さんにあやまった。そこで張さん、巫女にこれからは人々を騙すのはやめろといいつけ、馬に乗ってその場を離れた。
さて、この日からというもの、目には見えない四旦那の下男が付いているので張さんは怖いものなし。どこかへ出かけて困ったことがあっても、怖い獣に出会っても大丈夫であった。こうして一年が過ぎた。もちろん、張さんと四旦那の付き合いは途絶えていない。
と、ある晩に張さんはいう。
「私はこの世で貴公のような友を得て毎日が楽しくなった。しかし、これまで貴公の姿を一度も見ないというのはいくらか残念でししてな」
これを聞いた四旦那は笑って答えた。
「二人の間に情けがあればそれで結構ではござらんか。姿などどうでもいいこと」
これには張さん、黙って杯を口に運ぶしかなかった。
それから一ヶ月が過ぎたある日、四旦那の下男が「旦那さまが先生をお呼びでございます」といいにきた。張さんはわざわざ人をやって呼びにくるとはいったいなんだろうといつものように四旦那の屋敷に向かった。
すると、この日は普段よりいい酒と料理が並べられている。席に座った張さんが聞く。
「わざわざのお呼び出しで、どうなされた?」
「張どの。実は私はふるさとへ帰らなければならなくなりましてな」
「え!?」
「いや、訳は聞いてくださるな。そこで貴公は私の姿を一目見たいと申されていましたな?」
「いかにも。一目見たいと申しましたけれど」
「では、今日は貴公とのお別れとしてわたしの姿をお見せしよう」
「まことでござるか?」
「いかにも。では中の部屋の戸とあけてみなされ。中に私がおります」
これを聞いて張さんは中の部屋の戸を開けた。すると中に立派ななりをした美少年が立っていた。が、それはすぐに消えた。これに驚いた張さんが振り向くと、足音だけが自分のそばで聞こえた。
「これでいいでしょう」
張さん、もう一回見たそうな顔している。
「張どの。いつかは別れるときが来るもの。仕方がない。さ、別れの酒を飲もうではないか」
こうして二人は飲み始め、その日は張さん酔っ払い、夜半になって下男に送ってもらった。
次の日、目が覚めた張さんが慌てて四旦那の屋敷に来てみると、中はひっそりとして誰もいなかった。
さて、のちに、張さんの弟が西川地方の役人となったが、兄の張さんはどうしたことか貧しく暮らすようになり、これはいかんと弟を訪ね、助けを求めが、幼いときから仲が良くなかったのか、弟はかなりケチった。落胆した張さんは戻るしかなく、途上でため息ばかりついていた。と、あるところまで来たとき、一人の若者がロバに乗って付いてきたので、心細くなっいた張さんはその若者に声をかけた。落胆した張さんの顔をみて若者はわけを聞いたので、張さんがありのままを話すと、若者は張さんを慰めながら同行した。そしてある十字路まで来ると若者が不意にいう。
「私はここであなたと別れますが、前方を歩いている老人は、あなたの友人の託だとしてものをくれますよ」
「え?前方を歩いている老人が、私の友の託けたものをくれるって?」
「そう。ではこれで」
こういうと、若者はふと消えてしまった。
そこで張さんが先を急ぐを確かに老人が前を歩いている。そこで老人に追いついた張さんが声をかける。
「あのう・・そのう・・」
これには老人笑い出した。
「ははは!張さんですな。これを託けられましてな。ほれ、受け取られや」
こういって老人は背負っていた大きな袋を張さんに渡した。張さん、これはと中を開けてみると銀塊がたくさん入っていた。
「これを誰が私に?」と張さん聞く。
「ああ、それは四旦那からですよ」
老人はこういうとどこかへいってしまったそうな。
はい、これでおしまい。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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