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「賢いタチン」

2009-03-03 09:20:50     cri    

 こうしてタチンの案内でかのおじさんの住まいに来たが、ここからは自分の役目だと、化け物は一人でおじさんの家に入っていった。しばらくすると、家の中なら泣き声が聞こえ、同時に化け物が出てきた。それにかの皮袋を担いでいる。そしてタチンのところに来ると、皮袋を代わりに担いでくれという。そこでタチンはそれを担ぎ歩き出した。こうしてタチンはわざと裸麦の畑近くに化け物をつれてきた。化け物はこれに驚き「どうしてこんなところに?」と聞いたがタチンは応えず、皮袋を担いで畑の中に走り入った。これを見た化け物は慌てたが裸麦畑の中に入る勇気はない。そこでタチンの名を呼びながら、早く出てくるよう叫ぶとタチンが出て来て、裸麦を化け物めがけてたくさん放り投げた。これに化け物はびっくり仰天。慌ててあっちこっとに逃げながら人間が一番恐れていると聞いた金と銀をタチンに必死に投げ返す。そこでタチンはわざと畑の中に隠れて裸麦を投げ続けた。こうして化け物には裸麦がいくつか当たり、かなり怪我したので、もうたまらんとどこかへ逃げていった。

 しばらくしてタチンは化け物が戻ってこないのを確かめて金と銀を拾い、皮袋を担いでかのおじさんの家に向かった。そしておじさんの家から鳴き声がまだ聞こえたので家に入ってなだめた。これに娘が言う。

 「父は母と私を残して行ってしまったの。これから私たち親子はどうやって生きていくのかわからないわ」

 「安心しなさい。これからおじさんを生き返らせるから」

 このタチンの話に親子はびっくり。そこでタチンはこれまでのことを話し、かの金と銀を親子に渡した。しかし、この親子はタチンの話を信じない。そこで皮袋の口をあけ、冷たくなって横になっているおじさんの鼻穴の下にあてたところ、真っ青だったおじさんの顔に血の気が戻り始め、しばらくするとおじさんは息をし、目を開けて起き上がった。これに娘と母は涙流して喜んだ。これを満足そうに横で見ていたタチンだが、家を離れようするのを自分が生き返ったわけを娘から知らされたおじさんが止めた。

 「お若いの。あんたタチンだね。覚えているよ。どうもありがとう。生き返れてうれしいよ。それに金や銀までくれて、どうお礼していいのやら」

 「いや、いいんですよ。おじさん、おばさん、それに娘さんも元気でね」

 「ちょっと、ちょっと。このまま帰られてはこっちが困る。そうだ」とおじさんは、しばらくおばさんと小さな声で話していたが,おばさんがタチンの様子を見てうなずいた。そこでおじさんはいう。

 「タチン、君はまだ独り者だったね。今度のことを通じて君の人柄がつくづわかったよ。君はすばらしい若者だ」

 「ええ?いったい何が言いたいのですか?おじさん」

 「いや、うちの娘も年頃で、これまでよい相手を探してたんだ。君は両親もいない孤児だったな。どうだい、娘と一緒にならないかい?一人だから婿入りというわけになるけど」

 これにタチンはびっくり。娘をみると娘は顔を真っ赤にして外に出てしまった。これにおじさんとおばさんはうなずき、「娘はいやではないようだな」という。

 こうしてタチンはおじさんの話を聞き入れ、数ヵ月後に娘と式を挙げ、その後一家四人は幸せに暮らしたという。

 で、かの化け物だが、その後皮袋を取り返しに来たものの、怖いものなしのタチンがいつも裸麦を腰に縛り付けたり、懐に入れたりしているので、やがてはあきらめ、また閻魔さまの元へ帰るのも怖いので、そのうちにどこか行ってしまったとさ。

 では次のお話「ロージとゾバン」です。

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