中国のチベット自治区の農民と牧畜民の数は230万人余りで自治区総人口の8割以上を占めています。チベットでは農業や牧畜業こそが代代の生存方法でした。今日、これにも大きな変化が起こりました。車でチベットの道路を走ると、道端に多くのビニールハウスや整然とした牧畜地区が目に入ります。特色のある農業牧畜業が盛んになり、この長い歴史を持つ土地は新たな生気に満ち溢れ、農民や牧畜民に多くの利益をもたらしてきました。
チベット山南地区にある乃東県の農家では、古くから乳牛を飼育する慣わしがあります。しかし、乳牛の品種が悪く、牛乳の生産量が少ないため、経営がなりたちませんでした。ひいては自家製のバター茶の原料さえもほかの省から購入する必要がありました。このような状況に対し、乃東県農牧局は北京から優良品種の乳牛の冷凍精液を購入し、人工授精によって、地元の乳牛の品種改良をしました。
地元政府がリードとする乃東県優良乳牛繁殖地区は昨年正式に成立しました。ここの中心はホルスタイン乳牛の繁殖で、安い価格で周辺の農家に乳牛70頭を売りました。乳牛の牛乳の生産量は前より3倍から5倍増え、農民の収入が増加しました。乃東県農牧公司の責任者侯樹斌さんは「これは優遇政策によるものだ。地元では、ここ数年、にんにくの栽培が大いに奨励されている。農家はこの乳牛を買うときに、にんにく栽培と関係がある。農家はにんにく0.2ヘクタールを栽培すれば、優良乳牛一頭を優待価格で飼うことができる」と語りました。
にんにくは乃東県の特産で、海外にも輸出されています。土地の潜在力を十分に開発するため、地方政府はにんにくの栽培で優良乳牛と交換する政策を打ち出しました。それに、にんにく栽培の農閑期を利用して、牛の餌になる草を植えています。去年5月、色康村の農家の阿旺次仁さんは優待価格で雌の牛を購入し、生産した牛乳は自家用のほかに、販売して3000元の収入を得ました。阿旺次仁さんは「この乳牛の牛乳の生産量は非常に高く、一日平均15キロで、一般の乳牛より6キロも多い。この乳牛の生んだ子牛は来年の5・6月には少なくとも2700元で売ることが出来る」と話しました。
また、侯樹斌さんは、「今後、牛乳の販売ルートをいっそう拡大し、繁殖地区の建設を強化し、より多くの農家に利益をもたらすように努力していく。今年から、われわれは牛乳を一斉購入し、ラサ市の大手牛乳公司に供給する。今後5年間に、周辺の8000戸の農家をこのプロジェクトに誘致するつもりだ」と語りました。
山南地区の農業牧畜業生産方式の転換はチベット地域の発展の縮図です。チベットでは、2000年まで基本的に伝統的な農業と牧畜業を維持しており、特色のある産業の発展を重視せず、産業構造も不合理なものでした。2004年から生産方式の転換が急がれ、農村インフラ施設の建設も大々的に進められ、生活条件が大いに改善されました。現在まで、山南地区の耕地では小麦とはだか麦を60%、2工芸作物25%、牧草は15%栽培しています。アブラ菜の栽培も広く普及し、収入高はこれまでより3倍から4倍増加しました。
現在では、政府の扶助によって、農家は大胆に発展ルートを探っています。今年34歳のチベット族の女性益西卓嘎さんは山南地区最大の養鶏場を作りました。彼女は旦那さんと一緒に湖北省で専門的に養鶏を学び、2003年から養鶏業を行ってきました。政府は無料で雛と土地を提供しました。数年間の努力の結果、昨年の純収入は100万元となりました。
経営の規模を拡大するため、益西卓嘎さんは地元の10の養鶏農家と協力して畜産合作社を作りました。益西卓嘎さんはその中の最大の株主として自ら切り開いたルートを利用して、まとめて雛と餌を購入し、特価で合作社のその他のメンバーに売ると共に、彼らの販売ルートを確保しています。去年、益西卓嘎さんは新しい鶏小屋を建設し、県農牧局は土地と資金で株主となりました。益西卓嘎さんはこの提携方式に自信を持っています。「私は合作社の500戸の農家を組織して、養鶏業を行い、昨年合わせて、50万羽以上の鶏を販売した。より多くの農家に参加してもらうため、私は各村を回って、養鶏に関する講義をしている。多くの人が豊かになり、みんな喜んでいる」と益西卓嘎さんは語りました。
当面、チベットの特色のある農牧業は初歩段階にあり、生産基地は多くありません。しかし、これについて乃東県農牧局の羅宏鵬主任は未来の青写真をはっきりと描きだしています。
羅主任は、「チベット環境の特殊性によって、農産品は汚染がなく、品質がよく、消費者に歓迎されています。現在、養殖基地の数と規模の拡大に努力している。一定の規模が形成されてから、販売ルートを拡大することは比較的容易になるでしょう」と話しました。
中央政府はこれまで一貫して、チベット農牧業発展に対する支援を拡大しています。今年は政府はチベットの農業牧畜業の発展に数億元の資金を投入し、1000人余りの科学技術者を農村へ技術指導に派遣します。これによって、チベットの特色のある農牧業はよりいっそう盛んになるでしょう。(トウエンカ)
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