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「王冠の真珠」

2009-02-11 15:23:03     cri    

 さて、次の日、役人は朝早くに出かけ、昼ごろには咸陽の岳寺に着いたので、周りに誰もいないのを確かめてからかの門の下の隙間に手を差込むと真珠の入った袋がまだあった。

 「うへ!助かった、あってよかった!」と役人は大喜びで揚州にその夜戻ってきた。そしてかの胡人にそれをみせたところ、胡人たちは大喜び。これに役人、忽ちずるい顔になり、「どうですかな?値をもう少し上げましょう」といって相手側の顔色を伺った。

 「うん?値をあげたい?いくらですかな?」

 「そうですな。銀二千両では」

 これに胡人たちは苦い顔をしたので、役人は「だめであれば、取引はやめましょう」といいのける。するとかの胡人は笑い出した。

 「ははははっは!二千両!けっこう。払いましょう」

 こうして役人は真珠を銀二千両と引き換えた。胡人たちはかなりうれしかったのか、この真珠がいったいどんなものかが海でわかると言い、一緒にそれを見に行こうと役人を誘った。そこで役人は銀をうまく隠してから翌日胡人たちについて海に来た。

 そして船で海に出た後、胡人が小さな鍋に醍醐を入れて火をつけ、そこに真珠が入った小さな壷を入れて煮始めたとき、なんと海の向こうから二人の年寄りがそれぞれ宝物を担いだ数百もの兵士を率いてやってきて、その真珠とこれら宝物を取り替えたいという。これに役人と胡人たちはびっくり。いったいどういうことかとびくびくしながら聞く。しかし、相手はそれに答えず、どうしても取り替えてくれという。これに胡人たちは断ると答えた。こうして年寄りと兵士たちは仕方なく戻っていったが、すぐあとに空から二人の若い女子が舞い降りてきて、役人と胡人が口をあけている中を、なにか白いものを真珠を入れた壷の中へ投げ込んだ。すると「シュッ!」という音がして真珠は海に投げ出された。これに胡人たちは叫ぶ。もちろん、二人の女子は空に舞い上がって行ってしまう。そこで役人がいったいどういうことだと聞く。これにかの胡人がしぶしぶと答えた。

 「実はかの真珠は天の宝物で、いつか下界に来てしまったんですよ。で、あの真珠を持っていると仙人になれるといいます。そこで私はなんとか仙人になりたいので、たくさんの宝物で取替えに来ても。それを断ったわけです」

 「じゃあ、どうします?」

 「それはいたって簡単」という。そして五十いくつの胡人は一緒に来たほかの胡人に「ご苦労だった」と言い残し、自分だけが海に飛び込んだ。これに役人とほかの胡人が驚いていると、かの胡人はどうしたことか、例の真珠を手に海面に現れ「壷の中の残った水を海に捨ててくれ。そうすれば船は帰れるわい」といい姿を消してしまった。残った役人と胡人たちは仕方がないので言われたとおり壷の中の残った水を海に捨てると、風が吹き出し、船を無事に岸辺に送ってきたという。

 え?役人?役人はその後、黙ってかの真珠と取り替えた大金を何とか誰にも知られず自分の屋敷に持ち帰ったが、その日の夜半におきて金の入った箱を開けてみると、中に入っていたのはなんと石ころだったという。やれやれ!

 今度は「小川から釣れたもの」です。

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