国連は世界人口が10月31日に、70億人を突破したことを発表しました。では、70億人目の赤ちゃんはどの国に誕生したのでしょうか。判明は難しいため、国連は10月31日に生まれた全世界の赤ちゃんを「70億人目の赤ちゃん」とすると発表しました。日本では、この日生まれる赤ちゃんに、「70億人目の赤ちゃんの一人」であるということを認める認定証を発行するそうです。
現在の日本では、少子高齢化が問題になっていて、人口が減少しているので、あまり実感がないと思いますが、世界全体では大変な勢いで人口が増え続けているんです。人口が増えて気になるのは、食糧問題です。国連の発表によりますと、現在、人口爆発が起きている地域は、アフリカと南アジアです。そしてアフリカに飢餓が集中しているということです。
人口増加に伴い、職がない地方では家族を支えられず、職を求めて都市部へ人々が流入し都市化が進んでいます。いわゆる「流動人口」の増加に繋がります。しかし、収入を得ることができるようになっても、田舎へ仕送りをしなければならず、都市部では、以前なかった場所に出稼ぎ者が集まるスラム街化した「村」が現れました。空き地がなくなり密集度が増している都市部の貧困地区となりました。中国語では「城中村」と言います。そうしたことが、治安の悪化・高い失業率・貧困の拡大など、さらなる問題を引き起こし、悪循環になっています。これは都市化プロセスの中で深刻な問題です。一方、農村部の過疎化も進んでいます。
さて、実は、人口爆発が起こるということはその国にとって大きなチャンスでもあるんです。人口ボーナスは、簡単に言えば、人口が増えることによって得られる経済成長のことです。15歳から54歳までの働き手が、14歳以下と65歳以上の養われる人(子供・老人)の2倍以上になる時期を人口ボーナス期と呼びます。豊富な労働力を得て、より大きな経済成長が見込める状態なんですね。日本の人口ボーナス期は1960年代から2000年代まで、およそ40年間ありました。高度経済成長は1950年代からで、人口ボーナス期の少し前から始まっていますね。
実は人口爆発が起きれば、人口ボーナス期が来て、経済成長できるというような簡単なことではありません。人口ボーナスの恩恵を受けるためには、増えた労働力を有効利用できることが条件です。例えば、教育の制度をあらため、真面目に働く均一な労働力を確保することや、工業国をめざして、加工貿易を促進することなどです。
日本の場合では、高度成長期と人口ボーナス期に、東京オリンピックや大阪万博の開催にあたって、高速道路や新幹線など、インフラの整備を行いましたね。その結果、人々は働いたお金でテレビ、洗濯機、冷蔵庫、クーラー、車などを購入して、豊かな生活を手に入れたとも言えます。高度成長期には、消費が旺盛な中間層がつくられたことで、人口ボーナスの恩恵を受けることが出来たんですね。人口ボーナス期にむけて、政府が計画的に、モノを消費する中間層を増やす的確な政策がないと経済は成長していかないんです。
国の経済成長にとって、人口ボーナス期をうまく利用することが非常に重要になるんですね。つまり、モノを消費できる人たちを増やすことです。こうしてみると、いまの中国、GDPは世界第2位、2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博を開催するなど、人口ボーナスの恩恵を受けて成長を続けています。
中国は1970年代の末から行っている「一人っ子政策」の効果で、政策開始から21年後の2000年に人口ボーナス期に入りました。しかし、去年実施された第6期国勢調査の結果によりますと、中国では、60歳以上の高齢者が総人口に占める割合は13.6%と高く、すでに高齢化社会に入ったことが分かりました。さらに、社会科学院の発表によりますと、2040年、中国で65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は24%にも達し、3億人以上になる見込みです。
中国では一人っ子政策の実施によって、多くの家庭では、一人っ子どうしの夫婦が、2人で最低でも夫婦双方の両親4人の面倒をみなければなりません。一般の人たちにとっては経済的に相当キツイことですね。また、医療保険がきちんと整備されていないので、病気になることを非常に恐れています。さらに、農村部の人や決まった仕事のない人は、退職金に頼ることができないこともあり、多くの人が老後の生活に不安を持っています。そうすると、不安から貯金志向の人が多くて、無駄なお金を使わなくなっていて、消費の拡大にマイナスの影響を与えますね。経済発展の減速もありうるということなんですね。
中国では今、よくこんな言い方がされます。「未富先老(豊かになる前に老いてしまう)」という意味です。中国の個人所得はまだ低い発展途上国なので、「未富先老」(豊かになる前に老いてしまう)という問題は現実のものとなる可能性があります。たくさんの人が裕福になれないと感じ、不安やストレスが大きいのです。
高齢化を防ぐためというか、高齢者を養うために一人っ子政策の緩和を進めています。日本では「一人っ子政策」と言っていますが、中国では「計画生育(計画出産)」と言いますね。言葉のイメージから、勘違いをされている日本の方は多いと思います。「計画出産」は確かに厳しい政策ですが、一部の農村部や少数民族地区は除外されているんです。一部の農村部では、一人目の子供が女の子だった場合には、二人目の子を産むことが出来るんです。さらに2005年から人口の多い河南省以外では、 一人っ子同士の結婚の場合は二人の子供を生むことが許されました。まだ始まって6年なので変化が出るのはこれからだと思います。
一方、日本は今世界一の少子高齢化社会です。残念ながら今は、少子高齢化に歯止めをかけるための効果的な政策があるとは言えません。しかし、この問題を克服することは世界にとっても大変大きな意味があります。それが70億人を幸せにする一つかも知れません。70億人の地球、人口問題は人口爆発の途上国にとっても、少子高齢化が進む先進国にとっても大きな課題だと思います。みんなの知恵と力を絞って解決しなければなりません。(「イキイキ中国」より)
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