アメリカのオバマ大統領は2日、ジョージア州の州都アトランタで、イラク駐留米軍が公約通り、今月31日までに戦闘任務を終え、戦闘部隊を撤退さあせることを明らかにしました。これによって、アメリカはこれまで7年続けてきたイラク戦争を終らせることになりますが、今後のイラク情勢に対して懸念する声が高まっています。
オバマ大統領はこの日、戦争などで負傷した兵士の前で演説し、イラクにおけるアメリカの役割は軍主導の軍事的取組みから外交主導の文民的取組みに変わると述べました。また、イラクからの戦闘部隊の撤退は計画通りに進んでおり、今月31日までに完了させることを明らかにしました。今のところ、数百の軍基地を閉鎖または移譲し、数百万点の装備を撤収しているということです。
アメリカは、2003年にイラク戦争を起こしましたが、その後予想通りに進まない上、イラクでテロ事件が相次いで起きているため、数回にわたって部隊の増派を余儀なくされました。そして、オバマ大統領はその就任以来、対テロ作戦の重点をイラクからアフガニスタンに移していることから、イラクでの作戦部隊を徐々に撤退させてきたのです。イラク駐留米軍の規模は現在、およそ8万人ですが、今月末に戦闘部隊が撤退することで5万人になります。この5万人は、イラク治安部隊の訓練や支援にあたる予定です。
オバマ大統領がこの時期に戦闘任務の完了を宣言したのには、いくつかの理由があると見られます。それはまず、イラク政府との約束通りに部隊を撤退することにより、中東地域におけるアメリカへの評価をよくすることができます。つまり、アメリカが軍事行動によって中東地域を主導しようとしていると言われなくなるのです。また、イラクでの戦闘任務を終えれば、兵力や物資をアフガニスタンに移すことができ、アフガニスタンでの作戦をより効果的に展開することができるのです。これは、来年7月までにアフガニスタン駐留米軍を撤退するというオバマ政権の目標実現にはプラスとなります。それよりも重要なことは、間もなく行われる中間選挙に備えるためです。オバマ大統領は、イラク戦争を終了することによって、自分だけでなく民主党への支持率を回復させる狙いがあると見られています。
ところで、オバマ政権はイラクでの作戦任務を終えることでイラク戦争に終止符を打つことになりますが、アメリカがイラクで勝利を収めたとは言いかねます。イラクでは自爆テロが相次いでおり、治安情勢は悪化しています。同時に、今年3月7日の議会選挙以降、イラクの政治情勢は混迷しており、新しい政府の樹立が長引いています。こうした中、アメリカ軍が撤退すると、イラク情勢はさらに不安定になると懸念されています。
このほか、アフガニスタンにおけるアメリカの作戦実施も楽観視できるものではありません。以上のような一連の要素を考えれば、イラクからの撤退はことの始まりに過ぎず、アメリカ国民にとって、対テロ作戦を完全に終了させることが最大の関心事だといえるでしょう。
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