パラリンピックに出場する選手にとって大変なのは、障害だけではなく、年齢とも戦わなければならないことです。今回の北京パラリンピックでは、高齢にもかかわらず戦い続けているベテラン選手たちが、より感動的な場面を残してくれました。
射撃のクリストス選手は、カナダ選手団の中で最高齢です。これまで5回もパラリンピックにも出場し、決勝ラウンドに進出するものの、毎回メダルを逃していました。この結果に対して、クリストス選手は、冷静にに対応しています。彼の人生の中には、ほかにもこんな劇的なできごとが沢山あります。
数年前の医療事故が原因で、クリストス選手は頚椎を損傷、下半身不随になりました。不幸中の幸いは、右手がまだ問題なくピストルの引き金を引くことができます。左手の指は動きませんが、まだ銃床を支えることができます。衝撃的な挫折を経験し、彼は一時凹んでいましたが、しかしあきらめることなく、射撃を拠り所としてに頼って、新たな人生を踏み出してみました。クリストス選手は、「挫折や失敗は怖いものではない。最も怖いのは試しにやってみる勇気すらがなくなることだ」と語りました。
今年61歳アーチェリーのトリフォニズ選手は、ポーランド選手団の中で最年長です。北京パラリンピックは、彼にとって4回目の大会となりました。トリフォニズ選手の本業は、ワルシャワ理工大学所属飛行機エンジン生産工場のエンジニアです。今でも、彼は、大学の講義に出ており、生徒たちと一緒に実験を行っています。彼は、年寄りが好む緩やかな生活が好きではありません。彼は若者と一緒にいて、スポーツを好み、そうすればこそ若さを感じることができると話していました。
陸上競技は、そもそも競争が激しい競技です。ほかの競技と比べて、各種目の出場には、より強じんな肉体が必要とされます。しかし、パラリンピックのレーンの中には、年配選手の姿も見られます。トルコ選手団のなかで、最年長は、今年58歳のカメル選手です。彼が出場する種目は走行距離が最も長いマラソンです。最後に行われる種目なので、カメル選手は、パラリンピックの開幕から、各競技場を回り、若手選手の応援に励んでいます。
スポーツの中に、マラソンがわりに退屈な上に、選手が体質的に高く要求されています。若者でも棄権してしまう種目で頑張っているカメル選手はなんて強い精神に支えられていることでしょうか。彼にとって、マラソンに出場する意義はすでに競技そのものを超えているそうです。
ご紹介してきた3人の選手たちは、スロベニア女子シッティングバレーボール(Volleyball Sitting)のエミリ選手と比べてまだまだ若いほうです。今年の69歳のエミリ選手は、北京パラリンピックで最高齢だそうです。エミリ選手所属チームの平均年齢は40歳を超えています。エミリ選手は、チームメイトと共に2004年アテネオリンピックと3回の世界選手権に出場しました。70歳になろうというのに、エミリ選手は、まったくすでに年を取っていると思っていません。自分がチームの精神的なリーダーだと彼女が誇りに話しました。ベンチに入る時、彼女は、いつも赤ん坊ぬいぐるみを持っています。このぬいぐるみが彼女の元気の源だとそう話していました。
エミリ選手のような年齢ならば、家族と一緒にゆっくり晩年過ごすべきだと言われたり、スポーツ好きでも家でテレビで観戦すべきだと言われたりしますが、しかし、彼女にとっての一番の楽しみはコートで戦うことなのです。
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