開会式当日の午前中に私の住む北京大学の横を聖火が通過するということで、西門の狭い通りを待つこと1時間30分。いよいよ来るかと思って楽しみに見ていたら、通過したのは聖火といってもランナーではなく聖火が積まれたトラックでした!
こんなことなら、速く知らせて欲しかったと思いましたが、ものものしい警備でしたし、その通りの人の数は、北京大学の裏の道だけでも数万人はいたと思いますので、まさかランナーが来ないとは思いませんでした。
でも、私がとても感心したことは、聖火の通過が終わってから大群衆がだれも怒ったりしなかったこと。警備の人の数もすごかったので、言えなかったのかもしれませんが、「そんなことなら早く言ってほしかった!」という思いはみんな一緒だったはず。
私は、その状況で、文句も言わずに戻って行った中国の人々にこの日の開会式に臨む中国の人の心を感じました。もちろん、私自身も大群衆の中に混じって「中国 加油(ジャーヨウ)!」の大合唱を体験できたことで、開会式を迎える気持ちは高まってきました。
そして開会式。
私は開会式のテレビ中継をCRIのスタッフと仕事をしながら局内で見ることになりました。午後8時。いよいよ始まるという国家の斉唱の時にはスタッフ全員が自然に立ち上がりました。そして、私も一緒に立ち上がり、厳かに流れる中国国歌を静かに聞きました。
みんなの感動が伝わってきてジーンとなりました。
開会式の内容については、スケールの大きさと度肝を抜くような展開に本当に驚きと感動の連続でした。悠久の歴史の中に、ハイテクをちりばめ、最後は人間がやっているとは思えないような雑技のような聖火の点火。どの演出にも意味があり、深く考察され、長い時間準備してきたことが、十分に伝わる素晴らしい式だったと思います。
2008年8月8日。中国国民にとって最も長い一日は、北京に住む一外国人の私にとっても、忘れられない一日になりました。
【プロフィール】
1957年生まれ 早稲田大学教育学部卒 筑波大学体育研究科大学院修士課程修了 専門スポーツは陸上競技 早稲田大学本庄高等学院 教諭 早稲田大学スポーツ科学部講師 2008年4月ー2009年3月 早稲田大学から北京大学への交換研究員
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