改革開放後、テニスは富裕層の娯楽という位置づけであり続けました。テニスが一般市民のスポーツとして親しまれるようになってきたのは1990年代で、中国では比較的、歴史の浅いスポーツといえます。
1992年、中国10都市以上を巡回する全国ツアーがスタートしました。それをきっかけに、多くのテニス選手が腕を磨き、国際大会にも進出するようになってきました。
アテネ五輪で女子ダブルスの金メダルを獲得した李テイ・孫甜甜ペア、2006年の全英オープンで女子ダブルスのチャンピオンとなった鄭傑・アン紫ペアの活躍はいずれも世界をあっと驚かせました。またシングルスの李ナと彭帥もすばらしい活躍を見せています。いずれも今年の北京五輪での活躍が期待される選手です。ただ専門家は以下の原因から、彼らを取り巻く状況は非常に厳しいと見ています。
まずは大きなプレッシャーを克服しなければなりません。アテネ五輪のダブルスを制して以来、女子テニスの選手たちは、"中国の金花(貴重で美しい花)"と呼ばれてきました。また中国の国家代表を統括する国家体育総局のテニス中心は「女子を重点に置き、またダブルスの強化によってシングルスの発展を促していく」という方針を定めました。4年前のアテネ五輪で、李テイ・孫甜甜ペアは「無名の新人」として臨み、「負けても構わない。勝てばもう一回、自分を鍛えるチャンスをもらえたと考えた」という状況でしたが、現在、選手たちは、テニス中心と全国のファンの熱い期待を背負っています。彭スイ選手はこれについて、「今年に入ってから緊張感が高まってきた。毎試合、ランキングのことを考えなければならないから、非常にプレッシャーを感じている」と語りました。適度なプレッシャーは原動力となりますが、それも度が超えればマイナスとなるのは言うまでもありません。
次は、ケガの心配です。テニスセンターの五輪準備計画によりますと、2005年に実力をアップし、2006年に成績を出して、2007年と2008年に世界ランキングを向上させるとしていました。2006年に入ってから"金花"たちは世界各地を回って様々な大会に出場しました。そのハードスケジュールによって、選手たちは疲労し、ケガがちとなりました。特に鄭潔と李ナのケガは深刻で、本調子に戻るまで半年以上かかりました。その間に世界ランキングを落としており、また五輪本番でのコンディションも非常に心配されています。
また最も期待されている女子ダブルスについては、力のある2組で北京五輪に挑むという方針ですが、2007年2月、アテネの金メダルペアの一人、李テイ選手が引退し、選手選びに大きな影響を及ぼしました。そのため孫甜甜・彭帥ペアが急造されたのですが、その間、彭帥のケガなどもあり、ペアの練習時間は1年にもなっていません。五輪本番での急造ペアのコンビネーションに不安があるのは当然です。
これらの困難を"金花"たちはどうやって乗り越えて、五輪のテニス会場で、すばらしいプレーを見せ、どんな美しい笑顔を咲かせてくれるかが楽しみです。
一方、中国男子代表の目標はベスト8進出です。ATPで最上位の中国選手である孫鵬でさえ、世界ランク489位となっている現状から見れば、この目標も非常に厳しいものといえるでしょう。
北京五輪のテニスは8月10日から17日にかけて北京オリンピック公園のテニスセンターで行われます。
|