1月下旬、北京で最初にできたスキー場・石京龍で第1回日中友好スキー促進講習会の開校式が開かれました。北海道スキー連盟の役員及び12名のデモンストレーターがボランティアで北京に入り、この講習会を開きました。
対象者は石京龍スキー場及び近くの懐北スキー場、喬波氷雪世界(室内スキー場)のインストラクター約120名。日中の間で、このような本格的なスキー交流を開いたのは、今回が初めてだそうです。北京にある札幌経済交流室や、中日友好協会、北京市体育総会などが講習会の開催に尽力しました。
講習会は二つのスキー場に分かれて、三日間にわたって開かれ、内容は理論と実技に別れ、最終日に実技試験が行われました。
北海道スキー連盟関係者の話では、中国とのスキー交流のため、綿密な準備をしたようです。スキーによる国際交流の効果を実践するため、去年まで韓国で3年間にわたる講習会を開いたことなどです。
一方、スキー産業が中国に誕生してわずか10年ちょっとです。増えつつあるスキー人口に対して、認証制度を初め、指導方法や、スキー場の管理などが立ち遅れていることが指摘されています。
今回の講習会が開かれた懐北スキー場で取材しました。
まずは、今回の講習会を主催した団体の一つ・北海道スキー連盟の三品 章男さん(みしな・あきお)常任理事のお話です。
(北海道スキー連盟三品常任理事)
記者 どうして目を中国に向けたのですか。
三品 日本、そして、北海道が長くオーストリアのスキー指導者に指導を受け、今日の日本の指導方法、北海道のスキーを作りあげてきた背景があります。ヨーロッパのスキー指導者に多くお世話になったおかげで、日本は今や世界の中でスキー先進地になったと言われています。その恩返しをかねて、アジアの中で中国でのスキーの普及にお手伝いできればと考えて、この事業をスターとしました。
記者 将来的に、北海道を訪れる中国人スキー客の増加という期待も込めているのですか。
三品 私たちは公益法人で、スキースポーツを普及していくという大きな立場でやらせていただいていますが、実際、北海道の経済界では、中国という市場は非常に大きなマーケットですから、中国の人がスキーに来てほしいという期待は当然あると思います。
現状では、北京のスキーのシーズンは3月いっぱいで終わりますが、北海道は3月に入ってから、天気が安定してくるし、雪の状況もよくなってくるので、雪の良いシーズンになってきます。また、北海道の雪はふわふわしている天然の雪なので、北京で経験できないすばらしい体験ができるので、当然、中国から北海道にスキーしに来る人数も今後増えるではないかと思います。
記者 今回のスキー交流に対して、北京側のスキー場の反応はどのようなものでしたか。
三品 石京龍も懐北の指導者はいずれも、北京のスキー場で一番大事なことが忘れたので、それを教えてほしい、と言いました。それは、お客さんをもてなすという心。要するに、お客さんを心地よく、気持ちよく楽しませるということが中国の指導者が身につけていないので、それを教えてほしい、と言います。スキーももちろん上達してもらわないと困るけど、スキー場に来てくれたお客さんをいかに快適に楽しませるかということも知らない人が多いので、ぜひそこをお願いします、と。それと安全。安全に対して、もう少し心配りをするスキー指導者がほしいです、という話をしました。
今回の講習会を積極的に進めた懐北スキー場の王世同総経理にお話を聞きました。
「私たちのスキー場は来年も再来年も新しいコースを開く予定で、ありとあらゆる役に立つ海外の経験を必要としています。中国のスキー産業はスキー技術の認定から教材作り、指導方法、そしてスキー場の管理など、行き届かない点がたくさんありますので、海外からどんどん先進的なものを入れたいと思っています。ですから、私たちはこのような交流を心から待ち望んでいます。」
北海道から指導に訪れたデモンストレーターたちの話です。
「高橋瑞紀といいます。北海道の小樽から来ました。受講者の方が私の説明について、くいついて、自分ができるようになりたい気持ちがすごい伝わってきました。うまくなりたい意欲が伝わったことと、楽しんで滑るということで、一緒にできたことをすごい嬉しかったです。」
「長谷川奈月といいます。札幌から来ました。普段、スキークラブで教えていますが、こちらの受講生たちはもっともっとできることはないか、自分からできているかと聞いてきます。どんどん高いレベルを目指していることを実感し、すごいスピードで上達していますね。」
中国側のインストラクターたちにも感想を聞きました。
( 李迎霞さん)
懐北スキー場・李迎霞さん:
「新しいスキー技術を知りました。体重のおき方がこれまでと正反対だったので、驚きました。しかし、試してみたら、本当に力がかからない上、急な曲がり方もできるのです。これからゆっくり時間をかけて練習してみたいです。」
喬波氷雪世界・蒋英超さん:
( 蒋英超さん(中))
「最新の技術と指導法についてたいへん勉強になりました。デモンストレーターはみんな統一された滑り方をしているので、感心しました。中国のスキー市場がよりよく発展するためには、スキー教育が肝心です。今後もぜひこのような交流を続けてほしいです。」
北海道スキー連盟の皆さんは韓国と交流を始めてから、リフトの会社を始め、スキー関連の北海道の産業界と韓国の交流幅が広がりました。また、大勢の韓国の人たちが北海道へ行って免許を取るようにもなったそうです。今年は、北海道と北京のスキー交流の一年目ですが、スキー場を経営する企業の人も来ていました。
北海道のルスツリゾートの谷口隆朗(たにぐち たかろう)常務取締役のお話です。
「北京は初めてです。今回は中国のスキーの動向を把握するためにやってきました。上手に滑っている人たちが多くて、びっくりしました。中国ではスキーヤが年々増えているようなので、今後ビジネスチャンスがあることを実感しています。」
さてさて、来年以降もまた継続して行う予定の北海道と北京のスキー交流。このような交流は人々の心にどのようなものを残すのか、北海道スキー連盟の吉田英一教育本部長のお話です。
記者 交流の概況を教えていただけませんか。
吉田 今回は両スキー場で120名のスキー学校の先生を対象に、北海道のインストラクターやスキー連盟の役員が第一回の交流を行っています。そのうちの30名をセレクトして、3月に北海道にお迎えする、このかたがたは今度はスキー学校にその技術や指導法を普及させて、全体のレベルアップをし、こういうことを何年かくりかえしていけば、おそらく北京のスキーを愛する方々がどんどん増えるだろうと思います。
さらに、北海道と北京の一般のスキーヤ同士が交流したり、互いに山を楽しみあってもらいたいです。そうなれば、スキーの楽しみが世界に広がっていきます。そのようなきっかけになる第一歩を踏み出したくて、この企画を行いました。
私たちはあくまでも交流を通して、お互いに技術を高め、指導法を磨きあって、スキーに対する安全やマナーを十分勉強しあい、スキーの楽しみ方を覚えてくれる人が、どんどん増えることを期待しています。
記者 ゆくゆく、スキーを通して、札幌と北京とどのような関係になってほしいですか。
吉田 最終的には、スキーをする人は年とれば、だんだん滑れなくなります。最後に残るものは、その間に知り合った友達や人間関係、国境を越えて親しくなった方々、これだけは死ぬまで残る。これが最終的に「スキーをやってよかったな」、「スキーをやっていなければ、中国の人と友達なんかになれなかった」、「自分の人生はスキーを通してよい人生だった」と互いに思えるならば、中国と日本は過去の色々なことはさておいて、これからの子どもたちに非常に大事な財産を残すことができるじゃないかと思います。
記者 中国のスキーヤーに一番伝えたいことは?
司会 スキーの面白み、楽しみ、そして、スキーを通して仲良くなっていくことをもっともっと体で知ってくれたらいいじゃないかな。スキーは自分で苦労しながら、技術を把握できれば、もっともっと楽しいスポーツになる。そして、友達も増える。こういうことをぜひ早く知ってほしい。スキーの楽しみは深い。マスターするには苦労するぶん、人間的なつながりも深いです。
同連盟の理事・三品章男氏は、このような冬のスポーツの交流に乗り気であるもう一つの理由を教えてくれました。
「中国に来るようになった大きなきっかけの一つに、中国は夏の五輪がきっと大成功で終わるだろうと思い増す。今度は当然、冬の五輪の招致に入ると思います。しかし、ウィンタースポーツの愛好者がたくさんいないと、国民が盛り上がらず、冬季大会の招致ができかねます。スキーがウィンタースポーツの軸です。北海道スキー連盟はすでに冬季五輪を体験した実績がありますので、中国のお手伝いをしたいです。冬季五輪が中国で開いてくれることは、われわれの目的でもありますから。」
スキーで結ばれた札幌と北京の新しい絆は、今、正式にスタートしたばかりです。この交流は今後は継続される予定です。「5年間、一番よいのは10年続けて行いたいですね」、と三品理事。(王小燕)
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