世界自然と文化遺産 黄山
黄山市は1987年、国務院の認可により成立した市です。総面積9807平方キロ、総人口147万人。黄山風景区という景勝地のほか、3つの行政区と4つの県からなっています。
ここには、「奇松、怪石、雲海、温泉」で知られ、世界自然遺産と文化遺産の両方の指定を受けた黄山や、古い民家の「博物館」と称される世界文化遺産の西逓、宏村の二箇所の世界遺産があります。自然の景観と個性の強い地方の歴史、この二つが黄山市の観光業開発の大きな特徴といえます。
奇松、怪石、雲海
黄山市観光委員会の劉英旺副主任によりますと、2006年、黄山市を訪れた観光客は延べ1241万人(うち、海外からは55万人)を超え、年々伸びています。今年は1?9月までだけでも、延べ1172万人に達し、昨年より24.1%も伸びました。今、黄山市に星のつくホテルは62ヶ所あり、旅行社は103社、観光関係の商品を作るメーカーは32社あります。観光産業に従事する就業者は21万人で、就業者総数の約半分に達しています。
観光業は黄山市の最も特色のある産業になり、GDPの約45%を占めています。
黄山市の観光開発は、中国の改革開放と同じ歩みをたどってきました。
黄山山頂 北海賓館前の記念看板
1979年夏、当時の国家指導者の鄧小平氏は、黄山を視察し、黄山の美しい景色に魅了されました。経済発展の突破口を探す地元の人々に向かって、鄧小平氏は、「黄山の観光開発をして、黄山を名の知られる観光名所に仕上げていくよう頑張ってください」と発破をかけました。
黄山観光委員会の余国輝副主任によりますと、黄山の観光発展は当初、主として、山岳の自然景観の見学がメインで、文化や歴史の価値を生かすについての認識が不足していました。1990年代に入ってから、絢爛たる徽州文化の魅力がやっと見直され、今や、黄山及びその周辺地域を視野に入れた、文化遺産の保護、開発、利用を同時に重視する複合型の観光開発をしています。
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世界文化遺産 広村 | 一方、黄山市は、観光業の発展でいくつかの課題も抱えているようです。
地元の旅行社関係者の話では、現在、市内で入場料金をとる景勝地は26箇所ありますが、各景勝地の観光客の人数にばらつきが大きく、また、全体的に、黄山の観光は季節ごとに変動が大きいことも悩みです。
毎年メーデーと国慶節のゴールデンウィークの期間に、観光客が集中する一方で、冬は人数がぐっと減ります。今年も、先月の国慶節のゴールデンウィークの7日間に、延べ110万人の観光客が訪れ、1年間の観光客数の約10分の1を占めています。
このほか、黄山市内の各観光地は風景も文化も似通っており、いかにして黄山市での観光に、より充実で、個性的な内容を注ぐのかも課題のようです。
これらの課題に向けて、黄山市は様々な取り組みをしています。例えば、新しい観光地を開発する前に、綿密な計画を制定し、全国最高レベルの専門家からなる審査チームに厳格に審議をすること。それから、この地域の一番の目玉である黄山では、新しい観光コースを開発したり、雪景色の美しさを宣伝して、冬でも観光客が来るような措置をとったりしていること。また、何よりも、観光の中身を豊かにして、単純な物見遊山型の観光から、レジャー型、文化や歴史に触れ合う企画などを工夫するようになり、観光客がより長く黄山に滞在できるように工夫しています。
この中でも、今、黄山市が意欲的に取組んでいることは、農村観光の開発です。農村観光の発展は、ひとつは、都会の人々に農村の美しい環境に触れ、息抜きできるチャンスを提供することで、それによって観光の中身を充実させる効果が期待できます。もう一つは、農村のインフラを整備し、農民の生活レベルの向上、生活スタイルの改善などの効果も期待出来ます。
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?溪龍川ー歙県牌坊 |
現在、黄山はフランス国家観光局と提携して、中国国内でもモデルとなる農村観光のテストエリアをつくることで合意し、現在、具体的に話しを進めています。また、フランスで行なわれている「カントリー観光」を見習うため、視察団の派遣も予定しています。
黄山の今後の発展目標について、劉英旺副主任は次のように語りました。
「黄山市は今後、国際的な観光地となることを目標に据えています。世界自然遺産・文化遺産の効果的な保護と合理的な利用のモデル地域を目指し、全国でも総合的な実力と競争力の最も高い観光地に作り上げていくよう頑張っていきます。
2010年までに、年間延べ2000万人の観光客を受け入れ、そのうち、単なる観光だけでなく、レジャーで訪れる観光客の割合を30%以上に引き上げ、海外からの観光客を延べ100万人に引き上げることを目指しています。」
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