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量から味の時代へーー上海ガニの養殖農家、蔡紅林さんに聞くーー
   2007-10-15 10:30:53    cri

 10月に入ると、北京は朝晩の最低気温が10度を切り、秋らしくなってきました。ところで、天高く馬肥ゆる秋に欠かせないものは、秋の味覚です。日本では、松茸だけでしょうか。中国では、秋の味というと、なんと言っても、古典の『紅楼夢』にも登場した、あのこってりとした油ののっている黄色い味噌で食欲を誘う「蟹」です。

 中国語には、「秋風起,蟹脚痒;菊花?,聞蟹来」という言い回しがあります。つまり、秋風が吹けば、蟹の足が痒くなり、菊の花が咲けば、蟹の匂いが漂い、蟹を食べるシーズンになったという意味です。

 蟹というと、一番有名な産地は、蘇州と上海の中間にある「陽澄湖」、太陽の陽に、上澄みの澄みと書く陽澄湖という湖で、ここで取れる蟹が一番おいしいというのが定評です。この陽澄湖の蟹をもっとも好む人が、グルメの上海人(上海人は一人当たり毎年、12.5匹のカニを食べているという統計データもある)だからでしょうか、日本では、淡水で育ち、秋に食べる蟹のことを、「上海ガニ」と呼ばれて親しまれているようですね。上海ガニの中国での呼び名は、「大?蟹」と言います。「?」とはダムの水門という意味です。上海ガニの親蟹は淡水と海水が入り混じるところで卵を産み、孵化した子蟹は揚子江やその他の小さな河川を遡り、水門をいくつも経てやっと湖に入ることから、「大?蟹」と呼ばれるようになったと言われています。

 「上海ガニ」は日本でもグルメの代名詞のようですが、では、上海ガニの養殖の現場はどうなっているでしょうか。今日は、江蘇省の陽澄湖でカニ養殖をしている蔡紅林さんに伺ったお話をご紹介します。

 蔡紅林さん、44歳、妻と二人の子供の4人家族です。1994年からカニの養殖を始め、現在、およそ5ヘクタールの水面を請負、年間、約2万匹のカニを水揚げしています。蔡さんの家は、「上海ガニのふるさと」で名高い昆山市巴城鎮の黄泥岡村にあります。この村は上海と蘇州をつなぐ国道の中ほどにあり、上海までは車で1時間ほどで着きます。総人口2400人の小さな村で、昔は漁をすること、今はカニ、えび、魚などの養殖がメインの産業になっています。

 村に入って先ず驚いたことは、レストランが多いことでした。コンクリートのメインストリートをはさんで、ずらりとレストランが軒を並べていました。どこもそこも、カニの写真を看板に掲げています。

 蔡さんにそのわけを聞いてみました。

 「このレストランはオープンして、4年目に入ります。カニのシーズンになれば、上海から多くの友達やお得意先が尋ねてきます。自分が飲食店を持っていなければ、人の店へ連れていかなければなりません。せっかく自分で養殖しているのですから、やはり自分のレストランで調理したものを出したいですね。」

 カニの季節は9月から始まって、翌年の春節明けまでなので、レストランも季節限定の営業になります。

 中国では、古来より、秋にカニを食べる習慣がありますが、市場にカニが大量に供給されるようになったのは、1990年代以降の話しだそうです。

 「1990年代の初めには、私たちは捕まえてきたカニをバケツに入れて、国道の近くで売っていました。主に上海人を狙っての小規模な販売でした。

 1994年頃から、農家は個人個人が湖の一部分を請け負って、カニを養殖できるようになりましたが、何せ、カニの稚魚が高くて、一匹あたり17元から18元もかかり、その上、放流した稚魚の水揚げ率は良い時でも68%、つまり、100匹放流して、68匹取れれば上出来でした。そういうわけで、初めの頃は皆、養殖に不安を抱いていました」

 蔡さんの話では、幸い、カニに対するニーズが増え、その後、江蘇省や安徽省など長江デルタ地区のあちこちの湖で養殖が始められ、それに伴い、稚魚の値段も大幅に安くなったと蔡さんは言います。

 「カニの稚魚は崇明島という島でしかとれません。三月が産卵のシーズンで、最初は小さな蜘蛛ほどの大きさしかありません。約半年飼っている間に、カニは7回から8回ぐらい脱皮して大人のカニになります。」

 ところで、カニの養殖は、蔡さんの人生を大きく変えたようです。蔡さんは元々、出稼ぎ労働者として、上海でフェリーの運転手をしていました。94年、カニの養殖を始めてから、上海や大連の大手レストランとの間で定期的な供給契約を結び、販路拡大に成功して、富を手に入れました。カニ養殖の売り上げやコスト、収入などについて教えてもらいました。

 「5ヘクタールほどの水面で、毎年、2万匹ほどのカニが取れます。売り上げは180万元ほどあり、このうち、一番のコストは稚魚と飼料で、それぞれ30万元ずつかかり、また、湖の請負代金として35万元支払うので、純所得は年間80万元です。この村では、私の養殖規模と収入レベルは中ぐらいというところかな。まあ、自己採点すれば、85点から90点というところですね。」

 

 蔡さんの余暇の一番の楽しみは、お茶を嗜むことだと言います。また、自分はカニの養殖で富を手に入れたが、息子や娘が将来、大人になってからは、カニの養殖ではなく、自ら会社を興し、会社の経営者になってもらいたいと期待をもらしました。

 蔡さんの案内で、養殖している湖のほとりにも行ってみました。たくさんの網で湖の表面が細かく囲い込まれていて、農家の人たちは小さな木の船で自分が養殖している水面に行き来していました。

 「陽澄湖の養殖は一時期、密度がたいへん高くなり、飼料の投下によって富栄養化が進み、水質の汚濁が目立っていました。これを改善するため、数年前、蘇州市は養殖面積を制限する政策に乗り出し、徐々に成果が上がってきました。私の家も養殖面積は多い時に比べて、1ヘクタールあまり減りました。収入にある程度影響がありましたが、やはり、水質管理のことを考えると、必要なことだと思います。」

 上海ガニ協会は、このほど、陽澄湖の養殖面積を来年には、今年の半分にまで削減することを発表し、水揚げ量も今年の2000トンの予定から1000トンに減る見通しを出しました。しかし、その代わり、広くなった湖面でなるべく自然の環境の中で育つようにするため、肉がいっそうおいしくなると見られています。一方値段が高くなるため、養殖農家の収入はそれほど変わらないと予想されています。

 中国人の上海ガニへのニーズは、量から質へと変わって行く転換期にあるのかもしれません。(取材・文:Yan)

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