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中国製歯磨きの騒ぎの裏には
   2007-07-30 11:08:27    cri
 今年の6月以降、中国製練り歯磨きに有害とされる「ジエチレングリコール」が検出されたとして、アメリカ、シンガポール、香港、日本などが相次いで販売停止にし、商品回収する事態が起きました。7月11日、中国国家品質検査検疫総局は、「歯磨き原材料にジエチレングリコールを用いることを禁じる事に関する公告』という公文書を発表し、事態は収拾に向かいましたが、この事件がどのような背景で発生し、どのような問題を明るみにしたのでしょうか。

 ジエチレングリコールとは何か?

 ジエチレングリコール(diethylene glycol)は工業原料の一つで、不凍液、ブレーキ液、潤滑剤、インキ、たばこの添加物(保湿剤)、織物の柔軟剤、接着剤、紙、包装材料、塗料などの製品に幅広く使われています。ジエチレングリコールは歯磨きが乾燥するのを防ぎ、水に迅速に溶かせる効用がある上、性能が安定し、価格も安いため、価格のやや高いグリセリンの代替品として、中国で7ー8年前から歯磨きに使用されるようになりました。また、皮膚に吸収されないため、化粧品などにも多く用いられています。

 一方、ジエチレングリコール自身は甘い味がするが、肝臓、中枢神経、腎臓への毒性があるため、経口摂取(飲用・食用)すると、下痢や嘔吐が続き、最終的に腎不全に至り死亡するケースが多いというです。これまでには、不凍液の誤飲や、ワインなどに添加物として混入されて中毒事件を引き起こし、さらに、咳止めシロップの原材料として配合されていたため、薬を服用した人が死亡する例が報告されています。

 しかし、ジエチレングリコールは飲用・食用として摂取しない限りは、毒性は認められていません。中国国家品質検査検疫総局によりますと、今、EUとアメリカを初め、世界で食品におけるジエチレングリコールの摂取量については規制がありますが、歯磨きの配合成分において、ジエチレングリコールが規制対象ではなく、明確な国際基準もありません。また、これまでに、この成分が含まれた歯磨きを使用することにより、中毒事件を引き起こした報告もありません。

 ジエチレングリコール成分の配合された歯磨きが人体に与える影響について、上海市予防医学研究院の項翠琴医師とそのグループは2000年に、上海で1965人を対象にした調査を行いました。当時発表した論文によりますと、ジエチレングリコール含有量が15.6%の歯磨きを長期的に使用しても、人体に影響を及ぼさないとの結果が出ています。

 事件の過程を振り返って

 事の発端は5月中旬のパナマに遡ります。中国メディアの報道では、パナマでは、昨年10月から、ジエチレングリコールの配合された咳止めシロップを服用したことが原因で、360人以上が死亡した事件が起きました。そして、このジエチレングリコールは、中国から輸入したものだったことが確認されました。これに対して、中国の国家品質監督検査検疫総局は5月31日、記者会見を開き、調査結果を発表しました。それによりますと、問題となった咳止めシロップに配合された中国産ジエチレングリコールは、2003年8月に、スペインの貿易会社に工業用原材料として取引されたもので、品質保証期間は2004年7月まででした。パナマの商人は2003年、それらの商品をスペインから購入したが、薬品会社がそれを使い薬を調合した時には、商品名と品質保証期限が改ざんされたことが判明しました。一方、中国のメーカーと貿易会社には、紛らわしい商品表記をし、成分を貿易相手に知らせていないという問題点があると指摘されています。

 その後、パナマは中国から輸入した歯磨きからジエチレングリコールを検出したとして、販売停止を命じました。それを受けて、アメリカ食品医薬品局(FDA)は6月1日、中国産歯磨きから最高で4%のジエチレングリコールを検出したとして、消費者に中国製歯磨きの使用をボイコットするよう呼びかけました。続いて、6月5日にシンガポール、11日に香港、15日には日本でも相次いで同様の発表があり、商品の回収に乗り出しました。さらに、7月10日、欧州委員会が27のメンバー国に、中国がスペインに輸出した二種類の歯磨きから有毒物質・ジエチレングリコールが検出されたため、各国は自国市場で出回っている関連商品の検査と商品回収を呼びかけました。

 歯磨きは中国では日用品に分類されていますが、欧米や日本では、人体の健康に密接にかかわっている化粧品の部類に分類され、国の食品・薬品管理局が管理を行っています。ジエチレングリコールを使用した中国製歯磨きの騒ぎは、たちまち、中国食品安全脅威論と結びつけて、世界中に広まりました。

 このような動きに押されて、中国側商務省は、6月28日、中国産の歯磨きに安全問題はないことを改めて表明しました。続いて、7月11日、国家品質検査検疫総局は、当日から、ジエチレングリコールを歯磨きの原材料に使用することを禁じ、また、ジエチレングリコール成分の配合された歯磨き製品の輸出入を禁じると発表しました。

 また、最近、頻発している中国製品の安全性に関するマイナス報道を受けて、外務省の秦剛副報道局長は7月3日の定例記者会見で、、「問題があるのはごくわずかの企業だ。これにより、中国のすべての食品の安全性を否定してはならない。中国製品の輸出商品の合格率は高く、例えば、2004年から 2006年にかけて米国へ輸出した製品のうち99%が基準に合格した」と反論をしました。

 問題の背後には

 世界規模で起きた中国製歯磨きバッシングの波が、中国国内でも大きく注目されています。多くの

 マスコミは今回の事件を単発的な歯磨きの問題ではなく、広い意味から見ると、中国と諸外国との貿易摩擦の問題、それから食品安全基準の設定の問題に関わるのではないかと指摘しています。また、これをきっかけに、歯磨き問題を通して映し出された様々な問題点を深く掘り下げて、改善策を練っていく必要があるのではとも強調されています。

 歯磨きだけではなく、今年に入って以来、中国の食品は3月に、中国からアメリカに輸出された大量のペットフードが回収され、4月には、137種類の中国原産の食品に有害物質と安全でない染料が入り、アメリカの食品関連基準に違反したとして、アメリカへの輸出が拒否されました。これらの問題が起きた背景として、中国の食品輸出の量が凄まじい勢いで伸びていることが挙げられます。中国国家品質検査検疫総局によりますと、2006年、中国の輸出食品の金額は前の年に比べて、20%増えて、271億2500万ドルに達しました。しかし、中国の輸出食品は、様々な基準に違反したとして、輸入が拒否される事件が相次いで起きました。中国商務省の調査では、中国の農産品と食品産業は海外の技術的貿易障壁の影響を最も多く受けている産業で、90%の中国の農業及び食品輸出企業が海外の技術的な貿易障壁の影響を受けたことがあり、それにより、毎年、90億ドルの損失を蒙っています。

 一方、今回の歯磨き騒ぎについて、上海対外貿易学院の徐海寧教授は、「地域により基準値が異なっているため、中国企業はジエチレングリコール成分入りの歯磨きを作ることは法律違反にはならない。しかし、だからと言って、中国では一部の食品の基準値が低いため、安全面において潜在的な危険が潜んでいることも無視できない。歯磨きだけでなく、先進諸国から見ると、中国産の数多くの食品や日用品の基準が低めに設定されている。これが原因で、これまでにもすでに摩擦が多数起きている」と指摘しました。更に、徐教授は「長期的に見ると、商品構造を調整する歩みを速めなければならない。立ち遅れた設備や技術や、衛生状態の思わしくない加工方式を淘汰して、技術力の生かした、付加価値の高い商品の開発に力を入れなければならない。これには長い期間がかかる。しかし、もし今日の『基準』にまつわる摩擦などを、産業構造の調整、監督、管理レベルの向上につなげられるような動きにすることができれば、長い目から見ると、たいへん有意義なことだと言える」とも強調しました。(Yan整理)

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