クールな電子音に乗せて、デジタル的な光を放つひとつのバスケットボールが宇宙から飛び出す。ボールは大気圏を突き破り、地球に、中国に、そして、この北京のど真ん中に降りてくる。そのボールを受け取ったのは、ETそっくりの顔で知られる阿里巴巴社の総裁で、Yahoo中国の吸収・合併でサクセス神話を残した馬雲氏だ。ボールはその後、IT業界や通信業界のエリートたちの手に転がり、さらに、大手流通業の創始者、投資ファンドの会長、大手乳製品会社の創始者、大手国営集団企業の会長などの手へと次から次へと渡され、最後には、気功の「雲手」のようなしぐさで力強く押し出される。光ファイバーのトンネルに乗せられたボールは、光速で数千人数万人に囲まれたステージに到達し、NBAのスーパースターである長身の姚明選手が軽々とそれを受け止める。顔のクローズアップと共に、姚明のこもった声が電子音に乗せて鳴り響く。
「努力しても、必ず成功するとは限らない。しかし、諦めたら失敗するしかないぞ!」
これが、今、中国の起業家を目指す人たちの間で、たいへん話題になっているテレビ番組のワンシーンです。番組名は「?在中国」(中国で勝つには)。CCTV・中央テレビが初の試みとして、半年前にスタートさせたビジネスの実戦能力を競い合わせるコンクール型番組です。
参加者は一般向けに公開募集した結果、12万人が応募しました。予選を数段階に分けて行い、第一段階では12万人から108人を選び出し、その後は上位36人、上位12人へと厳しい選抜が繰り返されました。決勝戦は10月下旬から7週間かけて行われ、最終的に12人の選手から優勝者5人を決めるという企画です。
「起業」をキーワードにしたこの番組に応募した人は、これから起業を夢見る人もいれば、すでに起業して会社を経営している者もいます。年齢は20代から40代までと様々です。決勝戦の審査員を務める3人は、それぞれ赫々たる成果を勝ち取ったビジネス界の大物。総資産800億香港ドルの華潤集団を舵取り、現在は中糧集団の董事長の寧高寧氏。かつては、大胆な投資決断で数多くの有名企業を誕生させ、現在は中華英才網董事長を務め、そして、20億人民元の資金運用権を握っている今日資本集団総裁の徐新氏。投資ファンドSAIF(ソフトバンク・アジア・インフラストラクチャー・ファンド)総裁の閻炎氏。
このほかにも、数多くのビジネス界で成功を収めた人物が登場するなど、全面的なバックアップを得ています。参加者一人ひとりの素質がたいへん重要視されるので、試合の内容はいたって厳しく、起業家としての能力、精神力及び自己責任が厳しく問われます。番組のキャッチフレーズは単純明快で、
「猫か虎か、証明して見せなさい!」
「起業は辛い過程。最後まで持ちこたえられるのかどうかが、試練ですよ!」
「志で人生を照らし、起業で運命を変えよう!」
エンディングで流れるテーマソングを、選手や審査員及びスポンサー企業の総裁たちがみんなで歌い、起業の厳しさを歌い上げます。番組の成功によってかもし出された起業ブームは、番組終了後も、中国の若者を励まし、新たな社会的風潮を作り出すものと見られています。
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