10月15日から17日まで、山東省にある小さな町「栖霞市」へ取材に行ってきました。ここ5、6年の間に、CCTVのコマーシャルを通して、おいしいリンゴの産地として名が知られるようになりました。市政府は2004年から毎年地元で「リンゴ祭り」を開催するようになり、私は3年連続して取材に行ってきました。最初に取材に行った2004年当時、町には、道路は二車線しかなく、家も平屋がほとんどでした。でも、今では町のイメージはすっかり変わりました。道路は6車線に拡幅され、家も6階建てのマンションが増え、その中にリンゴの木が混在するおしゃれな町になりました。
緯度から見れば、栖霞市は青森県よりは南にあり、長野市とほぼ同じです。面積が2071平方キロメートルで、65万人の住民のうち45人万人が果物を栽培しています。リンゴが主な収入源となるこの町の農家は、確かにリンゴに愛情を注いでいます。
50代の曲祝民さんは0.2ヘクタールあまりのリンゴ畑を持っており、86年からリンゴの栽培を始めました。曲さんへのインタビューは、椿、くちなし、ミカンなどの鉢植えが置いてあるセメント敷きの庭で行いました。今、曲さんは自らリンゴを栽培すると同時に、リンゴの買い付けの仕事も行っています。曲さんは今の暮らしを都市住民と比較して、「毎年、品質の良いリンゴから得る利益だけで少なくとも3万元になります。以前より生活がずっと良くなりました。それに、この仕事は都市住民と違って時間的な制限がなく、自由です。ですから、私たち果物農家の暮らしは都市住民よりずっと楽だと思います。
私たちはいくらかゆとりのある暮らしというレベルではなく、もっと豊かな暮らしを送っています。とても満足しています」と話しています。
曲さんの年間利益の3万元は、日本円にしますと、およそ45万円、しかしこの数字は、北京の普通のサラリーマンの年間収入とほぼ同じです。曲さんは、2階建ての家を二軒持っています。道路沿いにある家は、1階がリンゴの貯蔵室で、今は回りの農家から運び込まれたピンク色のリンゴが山積み(やまづみ)になっています。2階は民宿にしており、客室が10室あって、東北のハルビン、チチハル、そして南の深センなどからのバイヤーを泊めています。今客室は全て満員だということです。奥の方にある家は、1階がオフィスと食堂で、2階の二部屋が家族用となっています。庭の外にはリンゴ畑が広がっています。今年のリンゴの売れ筋は、直径8センチ程の色づきがいいもので、500グラムで2元、日本円にして30円で売れるということです。この他、袋をつけて無農薬栽培にしているとか、剪定が大事だとか、地元政府が販売に力を入れてくれるとかといった話しをしているうちに、取材はおしゃべりになってしまいました。
朱:一年中で一番忙しい時はいつですか。
曲:収穫が始まる今頃から12月までです。朝5時から夜の12時まで仕事をしています。
朱:一番満足感があるときでしょう。
王:そうですね。リンゴが全部売れて、お金を数えるときは一番満足するときです。その時の感じはいいですね。
朱:これからはずっとこの調子で経営をされますか。
王:品種を改良して、より美味しいリンゴにしたいです。また国際市場にも進出したいですね。というのは、今いい値段で売れるようになったのもWTOに加盟したおかげです。もし、もっと多くの国に輸出できれば、収入はもっとよくなるにちがいありせん。
曲さんたちの農家の夢が託されたリンゴの品種は、実は、赤い富士という品種のもので、83年に日本から導入されたものです。アジアの人は赤い色のリンゴや甘酸っぱい味が好きだという好みに合わせて、3000種類もあるリンゴの中からこの品種を選び、それまで栽培してきた「国光」という青いリンゴに取って代わったのだと、栖霞市果物業発展事務局のテキ新民農業技術員が教えてくれました。果物の栽培では、「3割が栽培、7割が管理」という言い伝えがあり、管理技術がとても大事で、今の農家はその技術の向上にとても熱心だということです。同じ栽培面積でも、管理技術によっては、収入が数倍にも増えることから、技術の勉強に熱心な農家たちの要望に答えるため、覚え安く、実用的な技術を教えようと、テキさんをはじめとする事務局のスタッフたちが工夫をしているということです。
朱:管理技術の指導は、どのようにしていますか。
テキさん:まず、地元テレビで「農家の友人」というタイトルの番組を作って、週に2回放送しています。また、「果物新聞」という新聞もつくりました。年に一回発行していますが、毎月の作業、四半期ごとの重点作業などを説明しています。それから、養成クラスを設け、各村単位で人材を養成します。授業には専門家を招いて指導します。このほか、農作業が暇なときとか、朝晩とかを利用して果樹園で現場指導を行っています。
祭りの開幕式が始まる直前に、栖霞市共産党委員会の王国祖書記に、今後の抱負について話を聞きました。
王書記:栖霞市の特徴を活かして、環境に優しく、住民にも納得してもらえる新型農村にして行きたいと考えています。
今、中国政府は中国全土で新農村作りに取り組んでいます。栖霞市も町を上げて努めています。私は来年のリンゴ祭りの取材を楽しみにしています。
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