今、中国政府は「調和の取れた社会」という政策を進めています。「調和の取れた社会」を実現するには、現状にどんな問題点があり、どんな点を改善したらよいのか、様々なデータを分析して実態を把握する必要があります。そのため、北京市と国家統計局が初めて「北京市民の幸福感調査」を行いました。分析の対象となるデータには、所得の実態や、医療保険への加入状況、事件の発生件数など様々な統計を使うことにしていますが、そうした客観的なデータ以外にも、国民がどう受け止めているかという意識調査も必要であるとして、「幸福感に関する意識調査」を実施したということです。
全体としては、「幸せと感じている人が多い」という結果でした。「収入に対する満足度」や「仕事に対する満足度」、或いは「公平な社会かどうか」などいろいろな要素を考慮した上で100点満点で回答結果を分析したところ、90点以上の人が32%。60点から89点までの人が61%という結果でした。つまり大半の人が「大変満足」あるいは「まあ満足している」と答えています。ただし興味深いのは、働き盛りの人達の満足感が他の年齢に比べて低かったことと、必ずしも収入が多ければ多いほど「幸福感を感じているわけではない」という結果が出たことです。
まず36歳から55歳までの働き盛りの人達の幸福感が、他の年齢層よりも低かったことについて、調査を行った北京市の担当者は、「子育てやお年寄りの世話、仕事面での苦労など様々なプレッシャーがあるためではないか」と説明しています。
もうひとつ、収入の多い人が必ずしも満足していないというのは、ちょっと贅沢な感じがしますが。その点について北京市の担当者や専門家は、高収入の人たちは付き合う周りの人も高収入の人が多く、その人たちと比較してしまうため、要求そのものが高くなっているのではないかと分析しています。例えば住宅でも1軒目はすでに購入したが、2軒目をどうするかで悩んでいる人がいると言う事なんですね。
この幸福感調査以外にも調査結果も出ています。貧富の格差は拡大していないか、治安はどうか、社会保障は進んでいるかといった点を判断するために、所得の推移や刑事事件の立件件数、それに失業率、医療保険の加入率など20項目にわたるデータを専門家が分析した結果があります。それによると、2000年を基準にして2001年から2005年までの5年間のデータを分析したところ、全体的には毎年平均して3%づつ指数はよくなっていると言うことです。ただし社会保障や住民の意向をどれだけ政治に反映しているかといった分野では、進展はあまり見られず、今後の課題として残されているということでした。
劉:中国社会の発展の進み具合が、データで分かると言うことは、とてもいい試みです。
今回の幸福感に関する調査結果について、北京市では、比較する過去の調査がないので、「調和の取れた社会の進展度」を判断する総合評価のデータとしては、まだ使えないが、今後も継続することによって、調査結果を活かして行きたいとはなしていました。
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