2006年6月2日、文化遺産の管理部門である国家文物局は工業遺産の保護を指導する初めての文書を発表しました。それは「無錫提案」です。この提案は、4月18日に無錫で行なわれた「中国工業遺産フォーラム」の主な成果とされます。

　無錫市は3000年の歴史を持つ古い街で、中国の民族工業の発祥地でもあります。110年ほど前の1895年に「楊家」の兄弟が無錫に紡績工場を開きました。それから20世紀前半までに、楊家のほかに、周、栄という家族が起こした工業も盛んになり、綿紡績業と同時に、食糧加工業、絹紡績業なども発展し、地元に規模の大きい企業が多数現れました。

　1937年になって、無錫は工業生産が、上海や、南の杭州に次いで中国で三番目になりました。民族工業の発展によって、無錫でしっかりとした工業基盤が出来上がり、多くの工業遺産が残されました。

　工業が盛んになるのは世界で3百年から4百年の歴史をもつといわれますが、中国ではその歴史がもっと短くなります。しかし、工業化によって作られた財産は世界にとって、人々の生活にとって大きな影響を及ぼしています。

　これについて中国共産党無錫市委員会の楊衛沢書記は「文化財の保護は、歴史のすべての段階を含めるべきである。農耕時代の文化財だけを大切にし、工業文明の時代の文化財を大切にしなければ、それは歴史の記録として完備したものと言えない」と述べました。

　無錫市文化局文化財課の楊建民課長によりますと、無錫市の工業文化財は量が豊富で、種類も多く、運河沿いの古い市街地に集中しています。楊さんはまた「保護リストに組み入れられた工業遺産は約70ヶ所ある。一つは、古い工場の職場、また、企業家の古い住宅、第三に、企業家が起こした公益的施設だ」と述べました。

　こうした遺産の保護について、楊衛沢書記は「遺産そのものは、歴史の発揚と後継だと思う。それがそこにあってこそ、引き継いでいけるのだ。実物はなくなったら、それを人々に知ってもらい、それを受け継いでいくこともありえないだろう。だから、工業遺産を大切にしなければならないのだ」と述べました。

　無錫市では近年、工業遺産の保護を市を挙げて取り組んでいます。世界の経験を参考に、無錫の特色に似合った工業遺産の保護を模索しています。

　2000年無錫市は、現存する民族工業遺産を調べて、その重要度によって分類し、「無錫市工業遺産保護リスト」を作りました。無錫第一綿紡績工場、慶豊株式会社などはその中に入っています。

　また、古い工場や倉庫、埠頭に対して、それを取り壊すのではなくて、博物館にして展示しています。建設中の民族商工業博物館もその一例です。