「いやあ、すまん、すまん。実はあの方と雲の上へ行っておってな」
「雲の上?」
「ああ、そうか。まあ家に帰ってゆっくり話そう」
「で、あの方は?」
「それも、家に帰ってゆっくり話す」と楽雲鶴は妻とともに家に帰り、これまでのことを細かく妻に話した。はじめ妻は信じなかったが、そのうちに楽雲鶴の持ち帰った光輝く不思議な石を見てどうにか信じたらしい。
ところで、そのときから楽雲鶴の商いはとんとん拍子で進み、蓄えもかなり増え、その上、親友であった夏平子の妻もこれ以上楽雲鶴に世話になるのはいけないと、これまで楽雲鶴に貰って貯めたお金で小さな商いをはじめてた蓄えを増やし、息子もすくすく育ち、楽雲鶴も心配することはなくなっていた。
こうして翌年のある日に、楽雲鶴と妻が、かの石を取り出しながめようとしたが、なんと石は不意に宙に浮いたかを思うと、あっけにとられていた妻の口の中に入り、驚いた妻が吐き出そうして、なんと反対に石を飲み込んでしまった。慌てた夫婦は、真っ先に医者を呼んだが、医者は妻の様子を見て笑って楽雲鶴に言う。
「これはめでたいですぞ。あんたはこれまで子供がほしいといわれていたが、奥方は孕まれましたぞ」
これを聞いて夫婦はびっくり。しかし、かの男のことと、石のことは秘密なので黙っていた。
その日の夜、楽雲鶴は夢の中で死んだ夏平子に出合った。
「楽君、これまでどうもありがとう。妻と子供はもう大丈夫だね。お礼にわたしはあんたの子供となって生まれ変るよ。もちろん、生まれてきたわたしは昔の事は知らない。しかし、立派に育つからね」という。目を覚ました楽雲鶴がさっそくこのことを妻に言うと、妻は喜び、これはあなたがこれまでいいことしてきたおかげよと答えた、
やがて妻は元気な男の子を産み、この子は立派に育ち、親孝行者となり、のちに大した人物になったという。もちろん、楽雲鶴夫婦は長生きしたわい。
そろそろ時間のようです。では来週お会いいたしましょう。
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