さて、こうして半年がすぎ、楽雲鶴の商いもうまくいくばかり。
と、ある夏の日、久しぶりに雨が降ったので、男が今度こそはここを離れるという。そこで楽雲鶴は唇が腫れるほどしゃべって男に家にいるよう勧めたが、男は今度は何が何でも行くという。これを聞いて楽雲鶴は諦めた。そこで男はいう。
「楽どの。これまで黙っていたが、わしは雷の神でね」
「え?あんたが雷?」
「信じないかね。じゃあ、お見せしよう。あんたは空の雲に乗ってみたいとは思わんかね?」
「え?」空に浮かぶ雲かね?」
「ああ。いいかね、黙って眼をつぶりなさい」
これに楽雲鶴は黙って眼をつぶったが、どうしたことが不意に眠くなってきて、椅子の上で寝てしまったらしい。そしてすぐに目を覚ましてみると、自分はかの男と一緒に真っ白な雲の上に座っているではないか!驚いた楽雲鶴は立ち上がると雲は思ったとおりふわふわしていて、自分はもう少しで転びそうになった。これをみて男は笑い、「しっかり座っていないと転んで下に落ちますぞ」という。やがて夜になり、空には星が輝き始めた。それはとても言葉では言い表せない光景で、なんともすがすがしい。そのうちに、星たちがすぐ近くにあるのに気付いた楽雲鶴は、男に聞いてみた。
「星は目の前にあるが、手でとってもいいのなか?」
「うん?あんたのことだ。一つぐらいならかまわんでしょう」
男がこういうので楽雲鶴は手を伸ばし、一番近くにある星を手にとってみた。するとその星は楽雲鶴の手に移り、近くで見ると光り輝く丸い石であった。
「それは、あんたが持ち帰るといい。が、人に見せびらかすとひどい眼にあいますぞ」
「え?わ、わかった。大事にしまっておこう」
こういっていると、遠くから同じような雲が飛んできて、上には楽雲鶴が絵で見たことのある神々がのっている。これをみて男は神々に楽雲鶴を紹介した。
「ああ!この方は楽雲鶴といい、わしの友達で、とても人がよく正直なものですから、ここにつれて来ました」
これを聞いて神々は笑顔を見せ、また雲に乗って遠くへ行ってしまった。やがて男が言い出した。
「さ、もうお別れですな。わしは雷の神で、あるとき、雨を間違ったところに降らしてしまったので、罰として天帝さまは、わしを下界に3年間落とされたのじゃ。今日で丁度三年目でござる。あんたにあえてよかった。実はこれまで下界ではつまらん日々を過ごしていましてね。あんたと会ってからは楽しく過ごせましたよ。ありがとう。で、あんたはとてもいい人じゃな。これからもよいことをしてくだされ。そうすれば長生きできますぞ」
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