と、ある日、楽雲鶴が商いのため旅に出て金陵の町にある宿の一階の飯屋にいると、一人の背は高いがひどく痩せた男が店入ってきた。男は憂いな顔して隅の方に座り、腹をさすっては口に食べ物を運んでいる人を見るばかりで、店の小僧が来ても水をくれといったきりで何も注文しない。もちろん、小僧はいやな顔をしてほかの客の世話をしにいく。これをみた人のよい楽雲鶴は気の毒の思い、男に近寄るとわたしがおごるから何か食べなさいと勧める。しかし男は黙っている。そこで楽雲鶴は小僧を呼び、この男のために食べ物を注文した。しばらくしてうまいものが運ばれてきたので、男は黙って箸も使わず、手で主食や料理を口に運び、むしゃむしゃ食べ始めた。かなり空腹だったのであろう、男は食べ物を瞬く間に平らげてしい、まだ物足りないような顔をするので楽雲鶴はまた肉まんを注文すると男はまたも一つ残らず腹に収めてしまった。これでいいかなと思った楽雲鶴だが、男はまだ食べられそうなので、今度は煮込んだ豚肉と餡なしのまんじゅうを幾つもを注文したが、男はこれも食べてしまったあと、初めて口をきいた。
「いや、いや、かたじけない。これで腹いっぱいになりもうした。」
「それはよかった」
「実はわしは三年もこんなに腹いっぱい食べてはいませんのでなあ」
「え?三年も?」
「いかにも。あんたは実に人が良い。あんただけに言いますが、わしは天から罰を受けて地上に落とされたものでしてな」
「え?」
「そう、驚かれるな。これは人にはいってくださるな」
「わ、わかりました。で。あんたはいまどこに住んでいるのかな?」
「地上にわしの住まいはござらん。水の上で寝たり、昼は木の上で、夜は草むらなどで休んでおる」
楽雲鶴はこれを驚きながら聞いた後、二階の宿に戻って荷造りし終わり、家賃と飯代を払って店を出ると、なんと男は着いてきた。そこで楽雲鶴がどうか一人にしてくれというと男がいう。
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