今年84歳になる中国の芸術家・黄永玉氏に「五輪芸術賞」が贈られることになり、24日北京で開かれたIOC・国際オリンピック委員会の第120回総会で、ロゲ会長から授与されました。
この「五輪芸術賞」は、IOCの審査チームが選出した、五輪開催国の芸術家に贈られる賞で、建築や美術、音楽、映画などの分野で世界的にも活躍している人物に授与されるものです。
黄永玉氏は、国内外で名が知られている画家にして作家、そして詩人でもあり、中国美術家協会の副会長をつとめています。黄永玉氏は自らを「文学が一番、彫刻と塑造が二番、版画が三番、絵画が四番」と評価しています。中国の人々にとっては、申年の切手のデザインや、「酒鬼(飲んべえという意味)」という酒のパッケージデザインを手がけたことで有名です。また、オーストラリアやドイツ、イタリアなどで個展を開いたこともあります。
今回、IOC審査チームのメンバーたちの心を打ったのが、この黄永玉氏が手がけた版画で、北京五輪の開催を祝う作品「中国=mc2」です。高さが3.5メートル、幅が2.5メートルあり、10日間かけて完成したものだそうです。作品のタイトル「中国=mc2」は、アインシュタインの特殊相対性理論、質量とエネルギーの等価性を表した関係式「E=mc2」を参考にして名づけられたもので、「中国の急速な発展を、質量と力を二乗することにたとえた」ということです。
黄永玉氏は授賞の際、次のように挨拶しました。
「尊敬する皆様、尊敬する国際オリンピック委員会の皆様、
私たちの祖国でオリンピックが開催されることは、私たち中国国民の身体と頭脳、心、そして経済力が、古代オリンピックのように、ギリシャのオリンピア神殿の前に立ち、聖火を高く掲げ、太陽を迎えて世界と立ち向かう資格を持つことを意味していると思います。
オリンピックとは、世界の人々が、中国や中国国民を理解する最も理想的な方法でしょう。
北京オリンピックという光栄ある祭典が与えてくれた機会に深く感謝いたします。私は、湖南省西部の土家族ミャオ族自治州出身の(数え年で)85歳の土家族の老人です。
ここに、さらなる感謝の意を表したいと思います」
受賞後、黄永玉氏は「この賞は中国すべての芸術家に対して贈られたもので、世界が中国を認めたことを意味する」と語りました。
北京五輪開催中、黄永玉氏は、毎日オリンピック観戦に夢中になっていました。「劉翔選手は予選で棄権してしまったが、それを悲しいとは思わなかった。足を怪我していたので、これは仕方がないことだ。女子体操の程菲選手は、可愛らしい選手だし応援していたが、金メダルに手が届かず、私も悲しくなった。また、このオリンピックでメダルを獲得した選手におめでとうと言いたい」と語りました。
黄氏は、幼い頃から武術を習っていたので、体つきもしっかりしています。70歳を過ぎたころでも逆立ちすることができたほどです。今も部屋の中につるしたサンドバッグを叩くなどしてトレーニングを続けています。またハンティングも好きで、狙いはまず外さないという実力の持ち主です。黄氏は、「若い頃だったら射撃の選手でオリンピックに出場していたかも」とユーモア混じりに話していました。(編集:GK)
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