こんどは、酒の神杜康にまつわるお話「酒はどうやってできたのか」です。
杜康は黄帝の穀物作りを司る大臣であったという。で、数年も豊作が続き、穀物は増えるばかりで、蔵がない。そこで杜康は穀物を洞窟の中に積んでおいたが、洞窟は湿っていたので穀物はみな傷んでしまった。これに怒った黄帝は、杜康の役を解き、穀物を管理するだけの役につかせた。そして今度また穀物をだめにすれば処刑するという。
杜康は、自分は功労を立てるどころか、不届きを起こしてしまったことを嘆き、一時は気を落としたが、そのうちに考え直し、きっと今の役目を立派に果たすと決意した。
ある日、杜康は森の中に広場があるのを見つけた。広場の周りの古木はすでに枯れ、太い木の中は空になっていた。そこで杜康は、獲れた穀物をこれら古木の中に貯めておけば傷まないと考え、人を遣ってこれら木々の中をきれいさせ、そこへ穀物を詰め込んだ。
こうして二年がたったが、木の中のこれら穀物は、風にさらされ、一部は陽にもあたり、雨に濡れ、少し少し発酵していった。ある日、杜康が穀物を調べるため広場に来ると、古木の周りに数匹のヤギ、イノシシとウサギが横たわっていた。
「うん?どうして獣がこんなところでぶっ倒れているんだ?死んでいるのかな」と杜康が近寄ると、これら獣は死んだのではなく、いずれも寝てしまっているのであった。
「あれ?いったいどうしたことだ?」と杜康は足で寝ているイノシシを軽くけってみた。するとイノシシはびっくりして目を覚まし、人間が来たのを見てあわてて逃げていき、その音でウサギも目を覚ましたのか、起き上がると一目散に逃げていった。ところがいずれも足元がいくらかふらつくようで、イノシシのほうは一度転がっている。
「なんだ?なんだ?寝ぼけていやがる」と笑っていると、ヤギはあくびして起き上がり、そばに人間がいるのに気付きびっくり仰天。そして頭をぶるぶる振ってふらりふらりと逃げていく。杜康は弓矢を持ってこなかったので仕方なく獣が逃げていくのを眺めていたが、それよりも獣たちがここで寝転んでいたわけがわからん。
「おかしいのう?うん?何かうまそうなにおいがするな?」と杜康が見ると、木の割れ目からいくらかとろみのある水がポタポタと流れ出ていた。
「なんだこれは?」と杜康が近寄り、手でそれを受けてなめてみた。
「うん?少し辛いがいい味がする。よし、ちょうどのどが渇いていたところだ」と杜康は腰のひょうたんでその水を受け、がぶがぶと飲んだ。
「おお。これはいいぞ」と杜康は大きく息をした途端、不意に頭がふらつき、天と大地が回って見える。
「なんということだ」とそこを離れようとしたが、不意に目の前が暗くなりその場にぶっ倒れて寝てしまった。
それからどのくらい経っただろう。眠りから覚めた杜康、見るとお日様は西に傾きかけていたので、木から流れた水をひょうたんに詰め込み早速森を出た。そして持ち場に帰ると森の広場での出来事をみんなに話す。みんなは不思議がったので、持って帰ったひょうたんの水をみんなに飲ませた。するとみんなはその水のうまさと、飲んだ後に頭がふらつく気分をとてもいいという。そこであるものがこのことをいち早く黄帝に申し出るように勧める。しかし、あるものは、杜康は不届きを働き罰せられたのだし、いままた、穀物を木の中において水にしてしまったので、これを知ると黄帝は怒り、きっと処刑されるに決まっているという。これを聞いた杜康はきつい顔をしていう。
「今となっては、黙っているわけにはいかん。明日朝早く、広場に行ってかの水を持ち帰り、その足で黄帝のもとへいく」
さて、次の日、黄帝は杜康の話をきいたあと、自分もその水を味見してみた。すると口当たりがよく、それに飲んだ後頭がふらつき気持ちよくなる
「うん、うん、これは面白い水だ。味もいいし、飲んだ後が気に入った」
そこで黄帝は、大臣を集めこの水のことを話しあった。そして穀物が変わってできたこの水は、穀物の粋であり、飲めば元気が出るということになり、黄帝は、今度のことで杜康を罰するどころか、これからは、どうしてこのようなすばらしい水ができたのかじっくり調べ、何とかして人間の手でこの水を造りだすよう命じた。
こうして杜康は苦心の末、かの水と同じものを穀物から作り出した。そしてこの水は「酒」と呼ばれ、杜康も「酒の神様」とされてワイ
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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