今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日は「医者と物乞い」というお話をご紹介いたしましょう。
いつのことかはっきりわからん。金城の広里という町に高玉成という医者がいた。彼は針灸が得意で、病人が金持ちであろうと貧しかろうと、その病をしっかり治した。
と、ある日にここ広里に一人の物乞いがきた。物乞いは足に大きなできものがあり、そこから膿が流れ、道端に横になって喘いでいる。それに臭い匂いがして道行く人々は鼻をつまみ、物乞いをよけて通っていた。
近所の人はこの物乞いがここで死ぬことを恐れ、死なないようにと毎日いくらか食べ物を与えた。これを知った高玉成は、物乞いを家の玄関の近くの部屋に運ぶよう下男に命じた。下男は物乞いの匂いを嫌い、鼻をつまんでいるが、高玉成はいやな顔一つせず、足のできものに薬を塗ったり包帯したりし、また下男に物乞いの飯を一日三食運ばせた。
数日後、物乞いが小麦粉で作った「餅(ビン)」が食べたいと言い出したので、下男が怒って怒鳴ったが、これを見た高玉成は下男を叱りつけ、厨房にそれを作らせ、物乞いに食べさせた。翌日、物乞いは、今度は酒をくれという。これに下男が驚き、高玉成に、こんな贅沢が物乞いは追い出したらいいといったが、高玉成は少し考えてから物乞いがいる部屋にいった。そこで付いてきた下男がいう
「できものはかなりよくなり、瘡(かさ)が落ちればまもなく歩けるようになります。しかし、この物乞いは痛みが取れたのにまだうんうん唸っているんですよ。わざと苦しそうにしているだけですよ」
これに高玉成は答えた。
「酒だとてそんなに高いものではない。今夜から酒と肉料理を与えろ。かまわん。病がよくなれば、もうここへはこないだろう」
これに下男は首を縦に振ったものの、物乞いには酒や肉料理は与えなかった。その上隣近所にうちの先生はどうかしていると言いふらした。
|