これに人々が恐れおののき、家の中で雹の止むのを待っていたが、雹が止んで外に出るとなんと屋根の瓦がことごとく割れてしまっていた。しかし、上に草を敷いた孔一の家の瓦は大丈夫であった。これに孔一の言うことを馬鹿にしていた隣近所が仔細を聞きに来たので、正直者の孔一はありのままを話した。
このときから孔一は、鳥の言葉が分かるといううわさは瞬く間に広がった。そこで遠くへ出かける人は、その前に孔一のところに来て、天気などはどうなるなどと聞きに来たが、孔一が鳥から聞いたとおりにいうと、それがよく当たるので、孔一は医者として動き回るばかりが、占い師としても大変忙しくなった。
ある日、孔一がいつものように往診から戻り、居間でくつろいでいると、庭の木に鳥が止まったのを見て羽毛を耳にかけ、こんな会話を聞いた。
「おいおい、惜しいねえ。この大きな町も何日かしたら、水に埋もれてしまうというんだよ。大変だよな」
これに孔一は驚いた。しかし、目を閉じて考え出した。
「これは大変だが、もしホントならこれを知らせれば町の人々は助かる、しかし、もしウソであれば、人々を騒がすだけで、県令さまにことを知られれば、私は処刑されるだろう。どうしよう、黙っていようか!しかし、鳥の言ったことがホントならみんなを死なせてしまうな。どうしよう」
孔一が困っていると、なんと数羽のカササギが飛んできてしゃべり始めた。
「おい、知ってるか?三日後から大雨が振りはじめ、雨は七日間降り続き、低いところにあるこの町は水に浸かりだめになるぞ。これでは多くの人間が溺れ死ぬに違いない。気の毒にな」
「そうだな。これではこの町もおしまいだな、水に長い間浸かった町は、水が引いあとは、めちゃめちゃになっているに違いない・・」
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