今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日のこの時間は清代の書物から三つのお話をご紹介しましょう。
はじめは、「聊斎志異」から「銭の雨」です。
「銭の雨」(銭雨)
いつのことかわからん。賓州に貧乏な秀才がいて、その日部屋で本を読んでいると不意に戸が開いた。みると一人の白髪頭のじいさんだった。そこで秀才は笑顔で迎えた。
「これはこれは、おじいさん、」
「わしは胡というもので、実はキツネなんじゃ」
「え?キツネ?そんな」
「まあまあ、そんなに驚くことはない。わしは悪い連中と違ってこれまでいたずらなどしたことがない」
「ほ、ほんとかね」
「わしはうそはつかん」
「それなら安心だが・・で、貧乏なわたしに何か用ですか?」
「いや、実は、あんたが正直者かどうか、確かめに来たんだよ」
「え?わたしが正直者かどうかを確かめにきた?」
「うん」
「それはそれは。ご安心ください。わたしは正直者でこれまで悪いことはしていません」
「おお。そうであったらいいんだがのう」
「ほんとうですよ」
「では、わしは帰る」
「え?でも・・」
「うん?どうかしたかのう?」
「いえ、せっかく来られたんですから、お茶も出せませんが、わたしとお話でもしては?」
「そうじゃな。わしも今日は閑じゃから、あんたとお話でもするか」
ということになり、秀才とじいさんは、白湯を飲みながら話はじめ、古今東西といろいろ口にした。秀才は書物からいろいろなことを知ったていたが、なんとこのキツネのじいさん、秀才に負けないぐらい物事を知っており、話はなかなか終わらない。こうしてじいさんはその次の日も秀才を訪ねてきては話を続ける。
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