と、それから数日たった日の午後、じいさんはいつもの通りやってきたが、秀才は相手がキツネだから、一つぐらい自分の願いをかなえてくれるだろうと思い、しばらくためらっていた。これに気がついたじいさん、目をつぶってからきく。
「お若いの、どうしたのかな?なにか?」
これに秀才は思い切っていう。
「おじいさんとわたしもこうして忘年の友となったのでしょう」
「うん、ま、そういうことじゃな」
「それにおじいさんは長いこと修行を積んだキツネどのだから、少しぐらいの魔術は使えるんじゃないのかな?」
「ああ。少しは使えるがなあ」
「それじゃあ。今のわたしの懐を何とかしてくださいよ。こんな貧乏な暮らしじゃ、どうにもならない」
「ほうほう。ということは金かな」
「そういうこと。そういうこと」
「うーん」
「いけないかな?」
「いや。実はわしには金というものがない。じゃから、金を増やすには金がないといかん」
「金ならわたしの僅かな蓄えがある」
秀才はこういうと、懐から小さな包みを取り出し、それを大事そうにあけると、中には銭三文が出てきた。
「この三文を基にやってくださいよ」
「それは難しくない」
「じゃあ、お願いしますよ」
「仕方がないな」
じいさんはこういうとその銭を受け取り、それを右手で握り、なんかぶつぶついっている。秀才がそれを見ているとじいさんは「えい!」と一声出して銭を部屋の天井に放り上げた。すると、天井から小銭がパラパラと降ってきたではないか!そして小銭は積もって足首まで埋めてしまった。
「うひゃー!これはすごい」
「どうじゃな?お若いの。これで足りるか?」
「うん。これで十分だ。やった!これからはいい暮らしができる!」
そしてじいさんは部屋の外に出て行ったので、秀才も外に出て戸を閉めた。
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