今度は「嫁たちの腕比べ」です・
むかし、あるじいさん夫婦に三人の息子がおり、それぞれ嫁をもらって、一家は大きな庭を囲んで暮らしていた。長男と次男の嫁は金持ちの家から嫁いできたが、三男の嫁は貧しい家から来ていた。というわけで、金持ちの家の娘だった長男と次男の嫁は、怠け者であり、贅沢が好きだった。それに家事などは当然のことながらあまりできない。しかし、三男の嫁は小さいときから実家の家事を手伝い、嫁に来たあともこまめに働き、きちんと物を考えことを運んでいた。
ある年、じいさんは、自分たち夫婦はもう歳だから、主な家事を息子夫婦たちに任すと言い出した。実は、これまで表のことはすべてじいさんがこなし主な家事はばあさんが切り回していたのだ。ということは、息子三人にうち、誰かの嫁が、主な家事を切り回すことになる。これはこの家族のむかしからのしきたりだったのかもしれない。で、息子三人のうち、どら息子はいない。長男と次男は普段から三男の嫁は働き者で賢いということを知っているので、この家の家事は三男の嫁に任せると言い出したが、彼らの嫁がうんとは言わなかった。そこで兄弟三人がじいさん夫婦にこのことをいうと、これは大事だというので嫁も加わって家族みんなが決めることにした。こうしてある日みんなであることを決めた。それは料理のうまい嫁に家事を任せるというのだ。
さて、どんな料理にしようということになり、兄弟三人は、地元の評判料理であり、父と母が好きな鶏料理を三人の嫁に作らせることにした。これに三人の嫁もうんという。
というのは、長男と次男の嫁は金持ちの娘で、実家で美味いものいつも口にいているので、いずれも自信があるという。
で、その日。長男の嫁は自分も実家で作ったことがあるという鶏の煮込みを作り、その汁に工夫を凝らした。そして次男の嫁は、実家の卓上にいつも出る鶏の白蒸しをこしらえ、そのつけたれにいろいろなものを入れて出した。この二つの鶏料理にじいさん夫婦と三人の息子は舌鼓をうった。これに二人の嫁が得意になり、普段からいくらか馬鹿にしている三男の嫁を横目でにらみ、「あんた鶏料理ができるのかね」とでも言いたそうな顔をした。
さて、当の三男の嫁だが、ここでいいもの出さなければ負けるし、そんなに慌てることはないと思い、自分の鶏料理はすぐにはできないという。そこでみんなは待つことにしたが、長男と次男の嫁は影で悪口をいう。そんなことにかまわず、三男の嫁は、下味の付いた若鳥を煮た後乾かし、それを食べやすいように切ってから小さな甕に入れ、そこにお酒たっぷり入れて、葱や生姜なども加えて蓋をした。そしてみんながまだかまだかと催促するのをよそに、やっと三日目に料理ができたといい、みんなが待っているじいさん夫婦の部屋にその料理を運んだ。
この料理だが、口に入れてみると下味とお酒の味が濃く、その薬味の香りも十分で、とても美味しい。それに酒が効いているので気持ちよくなる。これにじいさん夫婦を始めみんなは上機嫌。
じいさんは「うん、うん。こんなにうまい鶏料理は初めてだ!」と褒め称え、長男次男の嫁もこれは参ったと黙ってしまった。こうしてこの一家の主な家事はこのときから三男の嫁が切り回すことになったそうな。
そろそろ時間です。では来週またお会いしたしましょう。
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