中国内蒙古の音楽といえば、中国伝統音楽に興味のある皆さんなら、馬頭琴などを使ったモンゴル族の歌が思い浮かぶでしょう。しかし、実は、内蒙古には、モンゴル族以外に様々な少数民族が暮らしており、それぞれ美しい音楽を持っています。そんな各民族の子供たちがこのほど、北京で天性の美しい声で、昔から伝わってきた民謡などを披露しました。
今回やってきたのは、内蒙古のホロンバイルに暮らすオロチョン族、エヴェンキ族、ダフール族などの、子供たちによる合唱団です。去年4月に結成され、団員は30人。発足早々、5月には地元内蒙古で、8月には北京で公演を行いました。そして今回が2度目の北京公演となります。
団員は、草原や農村で生まれ育った子が多く、都会の子より活発で健康的な感じです。演奏される歌も、現地へ行かないとなかなか聞くことのできない歌が多く、訪れた聴衆は民族独特の美しい音色に熱心に聞き入っていました。
「吉祥三宝」を歌った三人。右はブレンバヤルさん
合唱団の責任者はモンゴル族の歌手で、「吉祥三宝」を歌ったブレンバヤル(布仁巴雅爾)さんです。この「吉祥三宝」という曲は、お聞きになったこともあるかもしれませんが、中国でここ数年、大ヒットしている曲です。
ブレンバヤルさんは、この「子供」合唱団を結成した理由について、こう語りました。
「子供には未来があります。歌に限らず、ほかの芸術や文化も同じですが、子供のときから覚えないと、なかなか身につけることができません。地元の人でもその歌を歌えなければ、他の地方へ伝えていくことは、できません。
実は、今回披露した歌の中には、現地でもだんだん歌われなくなっているものがあるのです。そうした歌を保護するためには、まず子供たちに歌ってもらうべきだと思います。そんな思いから、『子供』の合唱団をつくったのです」
ブレンバヤルさんは、伝統の歌を語り継いでいくべき子供たちの"音楽教育"にも不満を持っています。
「いまの学校の音楽教育は、音楽の真髄を見失っていると思います。というのは、先生が楽譜を強調しすぎることで、生徒たちは、音楽に興味を持たなくなることがよくあるからです。これは、もともと簡単なことを、難しくしているのです。こんな教育では、子供は、音楽から楽しさを感じることはないと思います。
ですから、私たちの合唱団では、一つの曲を教えるとき、楽譜から教えるのではなく、直接メロディを覚えてもらうのです。要するに、子供に、音楽の楽しさを教えることが何より大事だと思います。
そして、私たちは日常の管理の中でも、子供の天真爛漫さなど生来のものを重んじています。学校のように生徒に対して厳しく要求するのではなく、子供にある程度自由を与えているのです。もちろん、それなりに苦労もありました。例えば、整列するとき、いつも3回以上命令を出さないとなかなか集まってくれません。1回だけでは、全然聞いてくれないから(笑)」(ブレンバヤルさん)
こうした自由に成長できる環境にいるからこそ、子供たちは、音楽に対する自分の思いとか、生まれついてのものを生かすことができたといえるでしょう。
モンゴル族には、「心をふるさとに残し、歌声を他の町に送る」という言葉があります。この合唱団の子供たちの歌声から、彼ら、そして彼らの祖先の心の響きを感じ取ることができると思います。(鵬)
|