『紅楼夢』は、『三国志演義』、『水滸伝』、『西遊記』と共に、中国の四大古典小説だと言われています。読書が大好きな毛沢東主席は「紅楼夢は5回読んで初めて発言権がある」と言ったことがあります。
『紅楼夢』は、実に奥深い小説で、中国では誰でも知っているほど絶大な人気がありますが、日本では、意外とあまり知られていないようです。実は、20世紀の初頭には、日本ですでに『紅楼夢』の完訳本ができました。これまでの完訳本としては、一番最初に、 幸田露伴、平岡龍城による 『国訳漢文大成 文学部 紅楼夢』 (1921ー22) ですが、それに次いで、 松枝茂夫訳の岩波文庫版 (1940ー1951、改訳 1972ー1985)、それから、伊藤漱平訳の平凡社 『中国古典文学大系』 本 (1958ー1960) などがあります。訳本がいっぱいありますけど、なぜか、普及率があまり高くないです。
では、まず、『紅楼夢』の作者の生い立ちや物語のあらすじなどをお話しましょう。
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『紅楼夢』は、1791年、中国の清の時代に発刊された長編小説です。全120回から成り、前80回が曹雪芹(そうせつきん)の作、後40回は高愕(こうがく)の続作といわれています。
この物語の舞台となるのは、賈氏という、今をときめく貴族の大邸宅です。
この物語の主人公である賈家の御曹司・賈宝玉は、美しい玉を口に含んで生まれてきました。
女の子と見まちがうばかりの優しい顔立ちで、詩や文章も上手ですが、
学問が嫌いで女の子と遊ぶのが大好きという、ちょっと変わった性癖の持ち主。
「女の子の身体は水で出来ている。男の身体は泥で出来ている。
僕は女の子を見ると気がせいせいするが、男を見ると胸がむかむかする。」
というのが彼の台詞です。
宝玉の周りには父方の従妹・林黛玉と母方の従姉・薛宝釵という二人のずば抜けた女性がいました。
二人は境遇も性格も対照的で、宝釵の家庭は天下の豪商で、一時的に賈家に寄寓しているのにすぎないのに対し、黛玉は父母を亡くし、賈家に身を寄せて生活しています。
宝釵は周囲に配慮が行き届き、しっかり者と評されるのに対し、黛玉は過敏で疑い深く、自分の運命を案じて日々泣き暮らしていました。
宝玉と黛玉は前世の因縁によりお互いの愛の成就を願いました。でも玉をもつ宝玉は金の首飾りをもつ宝釵と結ばれる運命にあり(金玉縁)、彼らの愛はついに結ばれませんでした。
黛玉は「涙を流し尽くして」その使命を終え、宝玉と宝釵の結婚の時刻に息を引き取ります。宝玉は再び夢に太虚幻境を訪ねて全ての因果を悟り、宝釵を捨てて出家、行方知れずになりました。
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