12月も残り1週間足らず、もう一年を締めくくる時期となりました。今年、取材を通じて知った中国文化の中には、我々を驚かせ、感動させるものが数多くありました。今回は、それらを3つのキーワードを使って振り返ってみたいと思います。

　まず一つ目は「無形文化遺産」です。これは、演劇・音楽・工芸技術など形のない文化的所産で、歴史上または芸術上価値の高いものを指します。ここ数年、中国政府が無形文化遺産の保護にいっそう力を入れてきたことで、人々に知られていない職人技や伝統芸能の多くが現代によみがえってきました。この番組では1月23日の放送で、北京の無形文化遺産「物売りの声」、「胡同」をまわって商売をする人のかけ声を特集してご紹介しました。

　この「物売りの声」を伝えていくため、北京市崇文区は「老北京民間芸術団」を設立し、「呼び売り」の研究者や愛好家を招いています。最年少の団員、80年代生まれの胡偉さんは、物売りの声についての思いをこう語っています。

　「私と同じ世代の人は、ほとんど、中国の伝統文化より西洋の音楽や映画にはまっています。物売りたちの知恵や昔の庶民生活がギュッとつまった物売りの声を、ぜひいまの若い人たちに聞いてもらいたいです。中国の伝統文化を継承し、世界に伝えることを、私たちの世代が担うべきだと思います」

　次のキーワードは「少数民族」です。私たちは今年、少数民族の習俗や芸術にもスポットを当ててきました。女性のお下げ髪の本数にこだわるウイグル族、結婚式で新郎新婦の体にカボチャやタマゴなどを投げつける回族…不思議な風習に、私たち中国人も驚くこと度々でした。とりわけ、チベット族の歌や踊りを集大成した歌舞劇「チベットの謎」が印象深かったです。これは、中国の各都市を回って、いずれも観客動員率90％を達成した公演です。出演者は、1人を除いて全てチベット族で、しかも半数以上が農牧民です。しかし、彼らのパフォーマンスはプロの歌手やダンサーにも負けません。伝統楽器・六弦琴の演奏、長袖舞、衣装祭り…日常の農作業やお祭りのときに披露される歌や踊りを、2時間にわたって舞台の上であるがままに演じていました。観客も、まるでチベット高原にいるかのような気分で公演を楽しみました。総監督を務めるのは、中国屈指のダンサー・楊麗萍（ヤン・リーピン）さんです。

　「チベットの踊りは心の踊りだと思います。チベット族は、このような踊りや歌によって、生活や自然に対する思いを表しています。この思いを、公演を通じてチベット以外の人々に分かってもらいたいと思っています」

　3つ目のキーワードは「中日交流」です。今年は、中国と日本の国交正常化35周年にちなんだ「文化スポーツ交流年」事業が行われました。私たちは、その事業のうち、子供向けの演劇「消防自動車・じぷた」や大型影絵「竹取物語」の公演、演歌歌手・長山洋子さんのコンサート、「日中のお祭りin北京」など、数多くの交流イベントを取り上げてきました。

　「今回は、まさにいいチャンスをつかんだので、ただ上海でコンサートをやったということだけで終わりたくないです。これをきっかけに、中国の民歌も含めていろいろな文化との交流を続けていきたいと思います」(演歌歌手・長山洋子さん)

　「生徒はみんな、中国は初めてです。違う芸能、見た目違うなのですけど、気持ち、あるいは思いは一緒なんだというのをみんな確認できる楽しい場だなあと実感しています」(「日中のお祭りin北京」に参加した岩手県花巻農業高校の教諭)

　「今日、日本の方々が見せてくれたお祭りや踊りは、全て初めて見たものです。正直、感動しましたし、心を打たれました。実は私は、前から日本に行ってみたいという夢があるのですが、このイベントで、この思いは強くなりました。「いつか」ではなく、「できるだけ早く」日本に行きたい…今はそう思っています」(「日中のお祭りin北京」を見た中国人大学生)

　2007年は、まさに番組名の通り、「カルチャーパワー」、文化のパワーをつくづく感じる1年でした。このパワーや、さまざまな文化イベントからもらった感動を伝えていくために、来年も頑張っていきたいと思っています。(鵬)