これを聞いた金持ち、いろんな医者に見てもらっても治らなかった娘の病が治ったので、張さんを仙人のように扱い始め、すぐに屋敷で宴を設けて張さんをもてなしたばかりが、約束どおり、銀一千両を礼金として出してきた。そして屋敷で一晩泊まり、翌日に出かければ言いという。王蘭と張さんはこれに喜び、夜に二人は相談し、一千両から二百両をこれからの路銀とし、残る六百両を王欄がその夜のうちにふるさとに持ち帰り、そのうちの三百両を張さんの家に届けるということになった。もちろん、王蘭は只者ではないからこんなことくらいは簡単にしてのける。
さて、翌朝になって張さんは屋敷を離れることになったが、金持ちは昨夜渡したはずの銀一千両を張さんがどこへやったのやら、かなり身軽で出かけるのを見て不思議がった。そこでまた銀三百両を張さんに渡した。こうして王蘭と張さんはかなりの金を稼いだ。
ところで、張さんの昔の友で賀才という男がいた。賀才はろくに働きもせず、金があれば博打と女につかい、このときもすっからかんで困っていると、人から張さんが方術を使ってかなり儲けたといううわさを聞いた。そこで必死に張さんを探し、なんと後から追ってきたではないか。これを見た王蘭は苦い顔して、賀才にいくらか金をやりふるさとへ帰らすよう張さんにいう。もちろん、張さんは王蘭の言うとおりにしたが、賀才は、金をもらったその日のうちに全部使ってしまった。これを知った王蘭は、賀才との付き合いを断てといい、それには金を多めに渡すしかないという。これに張さんは顔をしかめていたが、案の定、次の日に賀才がまた追いかけてきて、金をくれをいう。そこで張さんはいやいやながらも王蘭の言うとおりに、持っている金のほとんどを賀才に渡した。そして遊びはやめてまじめな人間になり、ふるさとへ帰れといい聞かす。
こちら賀才、張さんがこんなに多くの金をくれるとは思わなかったので、うれしくなり、約束するよといって喜んで行ってしまった。もちろん、賀才が本当に金を持ってふるさとに帰るはずがない。賀才が自分は金持ちになったからとその日から賭ける金が多くなり、高い宿に泊まり、上等な料理ばかりを口にし始めた。
これを見た賀才を知っている連中が貧乏人の賀才の金使いが荒いので怪しみ始め、これを役所に告げた。そこで役人は賀才にそんな金があるはずがないと、翌日賀才を役所に引っ立てて行った。そして今もっている金はどこから来たかを言えというと、賀才は黙ってしまう。起こった役人は賀才に拷問をかけたので、堪えられなくなった賀才は、とうとう張さんがくれたと白状した。そこで役人は下のものをやって旅をしている張さんを捕らえに行かせた。一方、賀才のほうは拷問がひどく、体もよくなかったせいか、翌々日に牢屋で息を引き取ってしまったわい。
また、こうして数日後に、張さんは役所に引き立てられたが、自分は何も悪いことはしておらず、王蘭のことは黙っていた。これに役人は怒り、なんと張さんにも拷問をかけた。これはたまらんと、張さんはとうとう王蘭のことを白状してしまった。しかし、張さんの言うことを役人は信じず、張さんを金を騙し取る罪で死罪とし、処刑をまつ牢獄に放り込んだ。
と、その日の夜、役人は夢を見た。夢には天の使いだという人が現れ、王蘭は、間違えて死なされ、今は地獄の仙人となっており、方術を使って人々の病などを治していることは本当であり、まもなく天帝さまから使いを言い渡されるだろう。それに張さんには罪はなく、いち早く牢獄から出してやるよう求め、さもなくば役人自身が痛い目にあうぞという。
この夢を見た役人は、かなりの頑固者で、夢などは信じず、翌日も夢の中の天の使いのいうとおりにしなかった。こうして三日目に役人は急に頭がひどく痛み出し、目が見えなくなった。さあ大変、役人の家族や役所は大騒ぎ。もちろん役人は床に伏し、医者を呼んだがどうにもならん。こうしてこの日、役人は死ぬ思いですごした。そして夜、役人が寝てもいないのに、耳元でかの天の使いの声がする。
「どうじゃ。そのほうはわしの言うことを聞かなかったので痛い目にあったのじゃぞ!これ以上苦しむのがいやなら、わしの言うとおりにせんか」
これには役人びっくり仰天。「は、は、¥、はい。あなた様の言うとおりにいたします」と答えた。するとそれまでみえなかった目がみえるようになり、頭の痛みもうそのようになくなった。これに役人は自分は馬鹿にことをしていたと悔やんだ。
こうして次の朝早く。役人は下のものに牢獄から張さんを出すよう命じ、また拷問で受けた張さんの傷を治す金まで出し、駕篭で張さんをふるさとまで送らした。
さて、家についた張さんだが、家にあった金と自分が持っていた金の半部以上を、家に帰らなくなった王蘭の家にもっていき、王蘭の妻や子供に王蘭のことを細かく話した。こうして王蘭の家は暮らしがより豊かになり、張さん自身も、その後、天帝の使いという役目にある王蘭の助けを受けてか、拷問で受けた傷もすっかりよくなり、長生きしたばかりか、一家そろって豊かに暮らしたという。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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