北京五輪の開催まで、3月27日でちょうどあと500日。この日、五輪開催地である北京に向けて、ふるさとを旅立った人がいます。
白龍華さん、43歳。郵便局の配達員だった白さんは、地元のお茶・プーアル茶30キロを二つのかごに入れ、天秤棒で担いで歩いています。このお茶を自らの手で、北京オリンピック組織委員会に渡そうと決心したのです。「これで、自慢のプーアル茶をアピールすることができるし、身体を鍛えることにもなる。これもまたオリンピック精神と言えるだろう。そして、体の中に潜んでいた『英雄』の夢も叶えるから、一石二鳥どころか、三鳥も獲ることになるよね」と白さんはいいます。
白龍華さんの故郷は、雲南省プーアル市墨江ハニ族自治県。県内には、歴史上有名な茶馬古道(ちゃばこどう)の始点を示す石碑があります。昔からの交易路である「茶馬古道」は、千年以上前の唐の時代に雲南省で取れた茶をチベットの馬と交換したことから名付けられ、20世紀中ごろが流通の絶頂期で、雲南省南部からチベット、ミャンマー、ネパール、インドなどへ抜けるいくつかのコースがあります。白さんは、茶馬古道を踏み出した先祖たちと同じような気持ちで出発したのでしょう。
白さんは、雲南から、貴州や重慶、陝西、河南、山西、河北を経て、北京にたどり着く予定で、およそ5000キロの旅となります。
雲南省プーアル市から貴州省の省都、貴陽までの1200キロを白さんは二カ月間かかりました。出発当初は興奮していましたが、毎日、歩いて、食べて、寝ることの繰り返しで、あまりにも単純すぎて、そして、一人なので、孤独でもあり、旅の辛さを味わっています。貴州省の晴隆から関嶺までは、山が高く、道が悪く、連日、雨が降り続いていたため、わずか71キロの距離ながら、4日間もかかりました。雨に濡れたせいか、担いでいるかごには、キクラゲが顔を出したそうです。
もちろん、白さんは、旅の楽しさも感じています。自らの目で珍しいものや、いきいきとしたものを数多く見たということです。貴州の有名な滝「黄果樹」の近くでは、桃売りを見かけました。故郷にはない風景だと、思わず、カメラのシャッターを切りました。白さんは、南の少数民族、ハニ族の出身ですが、標準語も使いこなしていて、撮った写真は、説明付きでインターネットに載せています。
白さんには、村の教師をしている奥さんと中学生の一人娘がいます。奥さんは、最初は反対でしたが、白さんの決心は固く、やむなく行かせました。娘さんは、それを聞いて、長い間貯めていたお年玉をお父さんに渡しました。昆明に着いたとき、使っている天秤棒が折れたことを奥さんは電話で知って、新しいものを届けに行ったそうです。「女房と娘は、よく電話をかけてきてくれ、しょっちゅう、ショートメッセージを送ってくれるので、励みになる」と白さん。その長い旅は、まだまだ続きます。(編集:藍暁芹)
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