今回の民族メロディーは、伝統楽器・古いに琴と書く「古琴」の大家である呉ショウさんの特集をお送りします。今年70才になる呉さんは、人間国宝級の古琴奏者で、中国南部の都市・蘇州で裕福な家に生まれました。古琴について呉さんは「古琴は2000年前の春秋戦国の頃に、すでに広く使われていた伝統ある琴です。その歴史を感じさせる音色はとても魅力です。」
古代では、文化人の嗜み(たしなみ)として琴、将棋、書、画が必修と言われていました。なかでも琴すなわち古琴が一番重要だった訳です。また、アジアの楽器の中でも歴史や奥深さでは一番だと言われるほどです。
春秋戦国時代、孔子は弟子たちに「詩経」を教えるとき、古琴を弾きながら、内容を唄ったそうです。その後、古琴は貴族の使う楽器となり、歴史上の皇帝の中にも古琴の演奏が上手な人も多いと記されています。
では、呉ショウさんがスタジオで演奏してくださった「瀟湘水雲(湘江の水と雲)」をお楽しみください。この曲は瀟江と湘江という二つの川が合流する美しい景色を表現しています。
「瀟湘水雲」
古琴の独特な魅力について呉釗さんは「古琴のメロディーは一見簡単そうに聞こえますが、豊かな表現力を持ち、静かさの中に美を表現しています。中国伝統文化の土壌で咲く音楽の花だと言われるほどです」
続いても、呉ショウさんが演奏してくださった「陽関三畳(陽関送別)」です。この曲は唐の時代の詩人・王維の七言絶句(しちごんぜっく)をもとに作られたものです。
渭城の朝雨 軽塵をうるおす
客舎 青青 柳色新たなり
君に勧む 更に盡くせよ一杯の酒
西のかた陽関を出づれば 故人無からん
「陽関三畳」
一昨年、古琴はユネスコの世界文化遺産として登録されました。でも、現在古琴は、これからどのように保護し、継承させていくかという問題に直面しています。これについて呉ショウさんは「私は96年に、日本の埼玉県を訪れた際、日本が伝統文化の保護や継承に尽くしている努力に深い印象を受けました。各国とも、伝統文化保護の面で直面する問題はそれぞれ同じです。お互いに参考にする要素が多いと思います。
最後は唐の時代の有名な詩人・李白の詩「関山月(故郷の月)」をもとに創作された曲を聞きいながらお別れです。この曲は、西域の辺境の地に行かされた男達の悲哀の気持ちを詠んでいます。
「関山月(故郷の月)」
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