6月19日は旧暦の5月5日・端午節、中国の端午の節句にあたります。中国では端午節が、初夏の一番重要な伝統行事で、この日はちまきを食べたり、ドラゴンボートレースを行うなどの習慣があります。今回の中国民族音楽は、この端午節にちなんだ中国各地の民族音楽を紹介します。
今から2000年ほど前の戦国時代、屈原という詩人がいました。祖国・楚が滅んだことをきっかけに、彼は汨羅江に身を投げてしまいます。人々は彼の体が魚に食べられないよう、魚のえさとしてちまきを作り、河に投げ込んだそうです。それ以来、屈原を偲び、人々は毎年この日にちまきを食べ、ボートレースを行い、よもぎを燃やすといった習慣が定着しました。そして、端午節は別名「詩人節」とも言われています。
さて、まずお送りするのは古代の打楽器・編鐘で奏でた「楚商(楚の歌)」です。編鐘は大きさや音階が異なる鐘で構成されていて、一つの鐘からは二つの音を出すことができます。
編鐘は、今から3500年ほど前の商の時代に誕生し、宮廷での演奏に使われ、当時は権力の象徴でもあったそうです。
この「楚商(楚の歌)」という曲は、詩人・屈原が追放される時の悲しい気持ちを表しています。
楚商
湖南省汨羅県の屈子祠村は、詩人の屈原が川に身を投げたところです。地元での端午節は、とりわけ賑やかです。 端午節の朝、村人たちは野山でヨモギや藤のつるを、また池のほとりでショウブを刈り、門に飾ります。これは、ただ屈原を偲ぶだけでなく、6月になり気温も上昇するこの時期 は、カやハエが出てきたり、疫病が流行ったりすることから、香りのきついヨモギやショウブで害虫を追いはらうことも目的とされています。殺菌や虫除け、病気予防に効果的な良い習慣だとされてきました。
では次にお送りするのは、湖北省の民謡「竜船調(竜船の歌)です。この歌は中国民謡の名曲で、端午節になるとよく歌われる曲です。
竜船調
端午節に、中国南部の人々が最も待ち焦がれるイベントは、ボートレースです。特に農村部でのボートレースはとても賑やかです。村人たちは、まず屈原を祭る儀式を行い、ボートレースの漕ぎ手たちがドラや太鼓、爆竹の音が鳴りひびくなか、屈原像を前にして、ひざまずいて拝みます。儀式が終わると、ボートレースのスタートです。ピストルの合図にあわせて、いっせいに船が水の上を飛ぶように走り出します。船の上ではドラや太鼓が鳴りひびき、両岸からは人々の歓声があがります。激しいレースを勝ちぬいた船は、村にといって名誉なだけでなく、その村に豊作と健康をもたらすとされています。
では、続いて弦楽器・揚琴で奏でた「竜船(ボートレース)」です。この曲は端午節の日に、人々がボートレースを観戦する楽しい情景を描いています。
竜船
最後に湖南省の民謡「船工号子(船頭達の歌)」を聞きながらお別れしましょう。この歌は船頭たちが川の流れに負けず、力一杯船を漕ぐ場面を再現しました。
船工号子
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