張潔は中国の現代女流作家です。1937年北京に生まれました。1960年、中国人民大学を卒業。1978年に執筆活動を開始しました。国家一級作家。国務院から「特殊貢献作家」の称号が授与されました。中国で最初に短編、中編、長編の三分野で国家規模の賞を受賞した作家です。1989年にはイタリア国際文学賞を受賞、1992年2月、アメリカの文学芸術院によって名誉院士に選ばれました。
張潔は現代中国では数少ない、日常生活以外に強い関心をもつことのできる女性作家の1人です。彼女の思索や苦しみ、デリケートさがさまざまな趣に彩られています。『無字』は、張潔が何年も企画・構想を練って出版した最新作です。80万字の力作で、3部構成。女性作家・呉為の一生における感情のプロセスを描いています。呉為と最初の夫とのやむをえない結婚、私生児となった娘との確執、苦しい生活のなかで母親と支えあう姿、後半生における2番目の夫との驚くような出会いと別れ……。小説は「無字」というタイトルで、女性の結婚に関する感情の物語をテーマとして、社会の大変革や中国社会100年の激しい変化を表現しています。この小説は、2005年に中国文学の最高の栄誉である「茅盾文学賞」を受賞しました。これは、中国文学界の認識と、中国の読者の好みが一致したことを示しているとされます。
彼女の代表作の一つ、「世界上最疼我的那个人去了」(世界で一番私を可愛がってくれたあの人が去った)という小説のあらすじを紹介します。
女流作家・妻・母親として忙しい毎日を送る女性。そんなある日、すっかり年老いた自分の母親に出会い、驚く。ボケも始まり、高齢で手術までして、すっかり弱った母親。自責の念に駆られながら、母親の最後の瞬間まで、精一杯の看病をする主人公・・・。
この小説が映画化されました。当初、彼女は「自分の自伝的な内容なので、映画化はやめてほしい」と言っていました。それを聞いて、映画監督の馬麗文氏は、絶望のあまり泣き崩れたそうです。しかし、それをきっかけに友達として付き合うようになった二人は、いつしか信頼関係が生まれ、最後には、「馬監督が撮るならば」という条件付きで映画化が決定したそうです。また、この映画は長春映画祭で、最優秀作品・最優秀監督賞を受賞しました。
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