今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日は清の時代に江蘇の淮陰にすんでいた百一という人の書いた「壷天録」という本から「剣の道」というお話をご紹介しましょう。
「剣の道」
童子傑は剣術に長けており、その剣は化け物をも殺せるという、しかし、それを信じる人は少なかった。
ある年の夏、童子傑は剣を背に山東に修行に向った。途中、一人の商人と道ずれとなったので、童子傑は、自分の剣のことをほめ始め、「私のこの剣は、大勢の敵を一度の切る伏せることはできないが、化け物なら一刀の下に切り倒せますのでねえ」という。
これを聞いた商人、その剣にかなりの興味を持ち始め、考え始めた。というのは。もう少しでつく済南の町外れに大きな空き家があり、それがお化け屋敷だとうわさされているのだ。そこで、商人は、童子傑という人物とその剣術を試したくなり、そのときはこのことは口に出さずに黙っていた。そして午後に済南に入ると、童子傑と同じ宿に泊まった。夕食時に童子傑が酒を飲んで飯を食い終わったのを見た商人は童子傑の寝る部屋に行って言い出した。
「旦那、日が暮れたというのに暑いね」
「そうだな」
「どうです。私はこの町の涼しいところを知ってますから、そこへ出かけようじゃありませんか」
「すずしいところ?」
「ええ、涼しくて面白いですよ」
「ふーん!じゃあ、宿にいてもつまらんから、行ってみるか!」
「へい。でも旦那の大事な剣を忘れないように」
「うん?剣を持っていくのか?」
「へえ。面白いことがあるかもしれませんよ?」
これを聞いて童子傑はいくらか首を傾げたが、自分は剣術使いなので、あまり気にせず、黙って剣を背負い商人と出かけた。
やがてその涼しいところに来たが、そこは屋敷だったので童子傑は商人を見た。商人は知らん顔して屋敷に入っていく。そこで自分も入っていった。
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