「あれ?おかしいですね。こんなに大きな屋敷なのに、門番も下男もないみたいですね」
「そうだな・・」
「旦那。この庭で待っていてください。私はこの屋敷のものを探してきますよ」
商人は、童子傑が答えないうちに、玄関の外へ飛び出し、意地悪そうな笑い顔浮かべて、懐からもってきた鍵を取り出し、玄関の外からそれをかけ、どこかへ行ってしまった。
こちら童子傑だが、かの商人を待っていたものの、なかなか戻ってこないので、玄関のところに行ってみるとなんど外から鍵がかかっていた。
「ふん!つまらんやつめ!私を試そうというのだな!まあいい。暇だし、この屋敷にどんな化け物が出るのかこの目で確かめてやるわい」
と、童子傑は気を取り直し、応接間らしい部屋に入ると、明かりをつけて部屋を見回したが、怪しいところはなさそう。それに夜には酒を飲んだこともあり、いくらか眠くなってきたので、この部屋の椅子を幾つか並べ、きれいに拭いたあと、明かりを消して横になり寝てしまった。
さて、しばらくして庭のほうでカタカタと音がするので、童子傑は目を覚まし、剣を抜いて窓を開けて庭を見た。すると、月の明かりの下、一尺あまりの丸々太ったものがぐるぐる回っていたので、童子傑はばかばかしく思い、「こら!静かにいたさんか!」と怒鳴った。すると、その丸々と太ったものは不意に姿を消し、松明がともったかと思うと、背の高い大男が戸を蹴り開けて応接間にどかどかと入ってきた。そのとき、消してあった明かりが急についたので、童子傑はその男を見てびっくり。それは黄色い顔をしたどんぐり目の化け物で、全身に緑色の毛が生えている。
これには童子傑ぎょっとした。だが、足が震えるのを我慢して剣を抜き、一応は構えた。すると化け物がケケケッと笑い出し、その声が大きいので、部屋が揺れだし、天井から土のかけらがぼろぼろと落ちてくる。
「ふん!お前の剣では鶏しか殺せん!なんだと?化け物なら一刀の下に切り倒せるだと!!」
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