次は「野人閑話」から「予言」です。
利州の町にぼうぼう頭で粗末な服をまといいつも裸足でいる男がいた。この男は常に天のことばかり口にし、紙と筆があると天の宮殿や天にいる鳥などばかりを描き、また夜はお寺にねて自由自在に日々を送っているみたいなので、みんなは男のことを天自在と呼んでいた。
ところで、利州には大きな市があり、毎日にぎわっていたが、ある日の夜に火事が起こり、その火は天に昇るような勢いであがった。これを寺のものから聞いた天自在はいう。
「地元の人々は長い間勝手なことをしてきたから、 天の裁きを受けるぞ」
こういって自分の手を境内の石のおけに溜まった水の中に入れ、その水を天に向けて煽った。すると霧みたいなものが寺の門から出て行き、急に空に雨雲がたれ大雨となり、市での大火事を瞬く間に消してしまった。
このことが起こってから、お寺の住職たちは、お寺で見たことを人々に聞かせたので、どうしたことか天自在はどこかへ行ってしまった。
で、その数ヶ月あと、ここではとても大きな火事が起き、多くの人が死に、町は廃墟と化してしまった。そこで生き残った寺の住職が天自在のいったことを思い出し、自分たちが外に余計なことを言いふらしたのを悔いだという。
そろそろ時間のようです。では、来週またお会いいたしましょう
|